2000 Fiscal Year Annual Research Report
肺腺癌と前癌病変におけるメチルグアニン-メチルトランスフェラーゼ発現の検討
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12770089
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
林 広行 横浜市立大学, 医学部, 助手 (90301415)
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Keywords | 肺癌 / 腺癌 / 発癌要因 / 喫煙 / O^6-メチルグアニンDNAメチルトランスフェラーゼ / 肺異型腺腫様過形成 |
Research Abstract |
O6-methylguanine DNA methyltransferase(MGMT)は遺伝子修復作用を有し、その発現低下は発癌に関与していると考えられている。また、その発現低下機序はその遺伝子のプロモータ領域に存在するCpG siteのシトシンがメチル化されることによるとされる。末梢型肺腺癌症例87例について、MGMT遺伝子のプロモータ領域のメチル化を、methylation-specificPCR(MSP)法にて検討した。メチル化は全体で35.6%(31/87)に認められ、喫煙歴による差違は認められなかった(喫煙群:19/51,37.3%、非喫煙群:12/36、33.3%)。また、MGMT発現を免疫染色にて検討したが、ほぼMSPの結果と一致した。腺癌を分化度で分類し、MGMT発現の低下及びプロモータ領域のメチル化を比較したところ、非喫煙群では分化度による違いは認められなかったが、喫煙群では分化度が低くなるにつれ、発現低下症例の割合が増加した(高分化:16.7%、中分化:42.1%、低分化:57.1%)。肺腺癌の前癌病変とされる肺異型腺腫様過形成10例について免疫染色を行ったが、発現低下はいずれにも認められなかった。これらのことから、MGMT発現の低下は肺腺癌発生に関与しているものの、喫煙歴がMGMT発現に与える影響は、肺扁平上皮癌におけるそれと比較すると弱く、非喫煙者に特徴的な異常とはいえないことが示された。MGMT発現の低下は、喫煙者では肺腺癌発生にプログレッション的な役割を有している可能性が考えられ、タバコ中に含まれるニトロサミン類などのalkylating agentsの発癌作用を増強している可能性がその原因として示唆された。これまでの前癌病変におけるMGMTの発現異常に関する報告は乏しいが、今回少数例に対して行った結果より、肺腺癌においてはMGMT発現の低下は癌化の段階から出現する変化で、多段階発癌の比較的後期に生じる変化であると考えられた。
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