2001 Fiscal Year Annual Research Report
抗体の初期レパートリーと親和性成熟の相関に関する研究
Project/Area Number |
12770169
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
古川 功治 東京理科大学, 生命科学研究所, 助手 (00297631)
|
Keywords | 抗体 / 親和性成熟 / CDRループ / 抗原結合部位 / レパートリー |
Research Abstract |
本年度は、前年度に行った、親和性成熟の過程を反映する一連の抗NPモノクローナル抗体のCDR-H3の構造と成熟の程度の相関についての研究を論文として発表した(J.Biol.Chem.276,27622-27628)。次に、これらの基準を用い本研究テーマの目的である、初期抗体レパートリーの親和性成熟能を実際に検討してみた。まず、NP免疫後1週目の抗体レパートリーの配列解析を約200クローン程度行った。その結果、免疫前と比べ、特にIgGlにおいて、胚細胞型のVH186.2を持つクローンが増えることが確認された。興味深いことに、これらのクローンのjunctionalアミノ酸は、免疫後2週目以降にモノクローナル抗体として採られたクローンより多様であった。言い換えると、免疫後1週目の環境は、ある程度の抗原親和性を持つために必須と考えられたH99=Tyr or Gly以外のアミノ酸を持つクローンでも、抗原の選択により淘汰されることなく存在できるものであることを示している。つまり、これら親和性成熟の過程に入る前のクローンで、かつ、親和性成熟の過程で淘汰される可能性のあるクローンが、この段階で存在していると考えられた。次に、この1週目の環境からモノクローナル抗体を作成した。11種類のクローンについて、そのH鎖、L鎖の可変領域のDNA配列解析を終了した。両鎖とも変異は導入されていなかった。H鎖のjunctionalアミノ酸については、抗体レパートリーの解析と同じく、H99がTyr or Gly以外のものも含まれた。さらに、これらのモノクローナル抗体を精製し、それらのCDスペクトルプロファイルの取得し、また、抗原結合に伴うCDスペクトル変化から抗原親和性も求めた。その結果、1)抗原親和性は全て10^5後半から10^6前半であり、低親和性の抗体でも十分に存在できる環境であることが確認された、2)CDプロファイル、および、「H3ルール」により予測されるCDR-H3の構造より、少なくとも、免疫後2〜6週で活躍するであろうクローンの祖先と思われるものが確認できた、3)しかしながら、9週目以降で活躍するであろうクローンの祖先と思われるものは、確認できなかった、4)また、2週目以降、淘汰されるであろうクローンも確認できた。これらのことから、後期型のクローンは、必ずしも免疫初期から存在し長い時間をかけて成熟するのではなく、ある時期を境に現れるクローンが祖先となっていることが示唆された。現在、これらの結果の投稿準備中である。今後は、これらの研究により得られたクローンを試験管内で成熟させ、本結果を検証していく予定である。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] Furukawa, K., Furukawa, A., Azuma, T.: "A Landscape for Affinity Maturation of Antibody, an Evolutionary Process in Immune Response"Protein Sci.. 10-1. 159 (2001)
-
[Publications] Furukawa, K., Shirai, H., Azuma, T., Nakamura, H.: "A Role of the Third Complementarity Determining Region in the Affinity Maturation of an Antibody"J. Biol. Chem.. 276. 27622-27628 (2001)
-
[Publications] 古川功治: "プロテインチップに何を託すか"細胞工学. 20. 1163-1165 (2001)
-
[Publications] 古川功治: "モノクローナル抗体医薬品創製における抗原親和性"日本臨牀. 60. 445-450 (2002)