2000 Fiscal Year Annual Research Report
老齢個体における生体防御機構の解明-特に自己細胞反応性T細胞を中心とした機能解析
Project/Area Number |
12770244
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Research Institution | Kitasato Institute |
Principal Investigator |
小林 憲忠 (社団法人)北里研究所, 北里研究所メディカルセンター病院, 研究員 (70290963)
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Keywords | 老齢 / 自己反応性 / 自己抗原 |
Research Abstract |
平成12年度は、BALB/c老齢マウスのリンパ節由来自己細胞反応性γδT細胞を中心に解析を行った。これまでの研究結果より、自己細胞反応性γδT細胞集団のなかでもVδ5陽性T細胞は、顕著に自己脾臓細胞に対して抗原応答性を示すことより、特にVδ5陽性T細胞ハイブリドーマを用いて研究を行った。自己細胞に反応するVδ5陽性T細胞の抗原認識の特徴(MHC拘束性):BALB/cマウスは、H-2ハプロタイプがH-2^dに属する。そこで、BALB/cマウスB細胞由来かつMHC classII陰性のcell lineであるM12C3細胞を用いて解析を行った。M12C3細胞にMHC dass IIであるIA^d分子を発現したトランスフェクタントであるTAβd細胞を抗原刺激細胞として、4種類のVδ5陽性T細胞ハイブリドーマと5日間混合培養(MLC)を行った。4種類のVδ5陽性T細胞ハイブリドーマは、M12C3細胞およびTAβd細胞のいずれにも反応しなかった。また、4種類のVδ5陽性T細胞ハイブリドーマと刺激細胞として自己脾臓細胞とでsyngeneicMLCを行ったところ、抗MHC class I抗体および抗MHC class II抗体存在下において自己細胞応答性は抑制されなかった。以上の結果より、自己細胞反応性Vδ5陽性T細胞は、MHC非拘束性に抗原認識する事が示唆された。一方、BALB/cマウスのNon-classicalなMHC class I様抗原であるTLa^c分子に対する抗体存在下で同様にsyngeneic MLCを行ったところ、Vδ5陽性T細胞ハイブリドーマの自己脾臓細胞に対する応答性が著しく抑制された。以上のことより、自己細胞反応性Vδ5陽性T細胞は、自己のMHC class I様抗原(TLa^c)もしくはこのTLa^c分子に発現した自己抗原を認識している可能性が推測された。自己細胞に反応するVδ5陽性T細胞により認識された自己抗原:自己細胞反応性Vδ5陽性T細胞の抗原認識においてMHC class I様抗原であるTLa^c分子に何らかの関係があることより、BALB/cマウスと同じH-2ハプロタイプ(H-2^d,TLa^c)を有するB10.D2マウスを用いて解析を行った。抗原刺激細胞として、B10.D2マウスの脾臓細胞を用いてVδ5陽性T細胞ハイブリドーマとMLCを行ったところ、Vδ5陽性T細胞ハイブリドーマは、BALB/cマウスと同じハプロタイプを有するB10.D2マウスの脾臓細胞には全く反応しなかった。さらに、BALB/cマウス脾細胞由来可溶化蛋白抗原とB10.D2マウスの脾臓細胞を抗原提示細胞として用いたVδ5陽性T細胞ハイブリドーマとのMLCにおいて、Vδ5陽性T細胞ハイブリドーマの自己脾細胞由来可溶化抗原に対する抗原応答性が認められた。以上の結果より、自己細胞反応性Vδ5陽性T細胞は、MHC class I様分子であるTLa^c分子に結合した自己抗原を認識している可能性が示唆された。今後、この自己脾細胞可溶化抗原を詳細に解析することにより、自己細胞反応性Vδ5陽性T細胞によって認識される自己抗原が明らかになるものと思われる。さらに、自己抗原分子の詳細な解析を行うことにより、自己免疫疾患予防の手がかりになる可能性が推察される。
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