2001 Fiscal Year Annual Research Report
B型急性肝炎におけるウイルスゲノムの解析による劇症化機序の解明
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12770278
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
鈴木 憲治 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (20281389)
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Keywords | 劇症肝炎 / B型肝炎ウイルス / ウイルス変異 |
Research Abstract |
B型肝炎ウイルス(HBV)による病態は多様であるが,その原因としてウイルス側の因子が注目されている。本研究では、まず最初にB型急性肝炎の重症化とHBVのcore promoter/pre-C, Core領域の変異との関連につき検討を行い,ウイルス側の要因について検討した。当院にて経験したB型急性肝炎16症例を対象とし,劇症肝炎群4例,重症肝炎群4例(ヘパプラスチンテスト40%未満),通常経過群8例の3群に大別した。急性期の保存血清より抽出したDNAを各種プライマーを用いてnested PCR法にて増幅し,直接塩基配列決定法にて各領域の遺伝子配列について解析を行った。劇症肝炎群にpre-C領域の28番目の停止コドンへの変異例が多く,重症肝炎群や通常経過群には各々1例のみであり,1896塩基のGからAへの変異は肝炎の劇症化に関与していると考えられた。core promoter領域の1762と1764塩基のdouble mutationは1896塩基の変異を認める例に多く,その単独例は劇症肝炎群中にはなく,重症肝炎群と通常経過群に各々1例ずつであった。core領域のアミノ酸レベルでの変異は劇症肝炎群4例中の3例,重症肝炎群4例中の2例,通常経過群8例中の2例にみられた。さらにcore領域に変異がみられた例の中,pre-C領域の28番目のコドンの変異を伴ったものは,劇症肝炎群3例中の3例,重症肝炎群2例中の1例で,通常経過群2例にはpre-C領域の変異は認めなかった。また,core領域におけるアミノ酸変異数と重症度とは相関傾向が認められた。しかし,アミノ酸変異の位置に明らかな共通性は認められなかった。さらに,肝炎ウイルスの劇症化機序解明のため,各群16症例中のgenotypeの検討とpre-S2のスタートコドンの変異の有無について検討した。genotypeは,pre-S抗原の抗原性の差異を利用して検出するEIA法,S領域の塩基配列の差異を利用して検出するRFLP法,pre-S1領域をPCR増幅し,プレートに固相したgenotype特異的プローブとの相補性により検出するGenotype Specific Probe Assay法,pre-S1領域の遺伝子配列をみる直接塩基配列決定法にて検討した。pre-S2領域についても同様の方法で行った。しかし,今回の検討では,肝炎の重症化とgenotypeとの相関は明らかでなかった。また,全例においてpre-S2のスタートコドンの変異は認めなかった。肝炎の重症化にはgenotypeよりもHBVの遺伝子変異との相関が強いと考えられるが今後の症例の蓄積が必要と思われた。
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