2000 Fiscal Year Annual Research Report
モデル動物を用いた不全心筋の収縮及び細胞内カルシウム動態に関する研究
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12770360
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
川井 真 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (40277025)
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Keywords | ラット / 単離心筋細胞 / 細胞内カルシウムイオン濃度 / カルシウム感受性 / 細胞内水素イオン濃度 / フェニレフリン / α受容体刺激 / 細胞膜Na / H交換系 |
Research Abstract |
本年度の実験内容は、ラットより単離した心筋細胞内のカルシウムイオン濃度変化(Ca^<2+> transients)と細胞長変化の同時測定並びに、細胞内水素イオン濃度変化(pH_i)を測定可能な実験装置の設置から行なった。Ca^<2+> transientsの測定はカルシウム蛍光指示薬であるfura-2 AM(使用濃度4μM)を、pH_i測定は同様にpH蛍光指示薬であるBCECF AM(使用濃度8μM)を用いる事で可能となった。また、細胞長変化は細胞端を検知するエッジ・ディテクターを用いて測定することで、単離心筋の電気刺激収縮中のCa^<2+> transientsと細胞長変化を同時に観察することが出来た。そこで、0.2μMのthapsigarginによる前処置後、10Hz・10秒間の電気刺激中に得られたCa^<2+> transientsと細胞長変化(L)を同一グラフ上にプロットすると、細胞内に存在する収縮蛋白のCa^<2+>に対する感受性を知ることが出来る(Ca-L trajectory)。このCa-L trajectoryは、β-blockadeである1μM bupranolol存在下で、α_1-agonistである1〜100μMのphenylephrine(Phe)によって、容量依存性にグラフ上で左にシフトした。これは収縮蛋白系のCa^<2+>感受性増強を意味する。このPheによる効果は、細胞外Ca^<2+>濃度を0.5から2mMへ増加させても変化がなかった。α_<1A>-selective agonistである1μM A61603はPheと同様にCa^<2+>感受性を増強させ、α_1-antagonistである1μM prazosinはCa^<2+>感受性増強効果を完全に抑制した。そして、細胞膜上のNa/H交換系を抑制する5μM EIPAはPheによる効果を元に戻した。pH_i測定では、PheによりpH_iは上昇(pH7.4からpH7.7へアルカリ化)したが、α_1-antagonistであるprazosinと細胞膜Na/H交換系を抑制するEIPAにより元に戻った。さらに、100nM angiotensin IIと10nM endothelin-1もPheと同様にCa-L trajectoryを左ヘシフトさせた。 本装置によりCa^<2+> transients・細胞長変化・pH_iの測定が可能となり、心筋細胞に対するα_1-adrenergic stimulationはCa^<2+>感受性を増強させ、その効果は細胞外Ca^<2+>濃度には依存せず、α_<1A>-receptorを介するNa/H交換系の活性化に伴う、細胞内のアルカリ化に起因するものと考えられた。引き続き本年度と来年度に渡り、本実験装置を用いて肥大心筋・不全心筋における収縮蛋白系のCa^<2+>感受性変化・筋小胞体機能と、α-β-agonistに対する効果等も検討したいと考えている。
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