2000 Fiscal Year Annual Research Report
てんかん原性の獲得に果たす抗グルタミン酸受容体自己抗体の役割に関する研究
Project/Area Number |
12770523
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
鈴木 勝昭 浜松医科大学, 医学部, 助手 (00285040)
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Keywords | Rasmussen脳炎 / AMPA受容体 / 自己抗体 |
Research Abstract |
本研究の目標は,GluR3蛋白に対する自己抗体を実験動物の脳内に導入してRasmussen脳炎様の病態を再現することにある。そのために,平成12年度はラットを用いて研究を行った。 まず,実験1として,ラットにGluR3蛋白を接種して抗GluR3抗体を産生させ,臨床症状を観察するとともに,血清を間歇的に採取して免疫グロブリン分画を精製し,in vitroでのラット大脳皮質培養細胞に対する細胞傷害作用の有無を検討した。その結果,これまでに検討した動物は,いずれもけいれん発作や麻痺などのRasmussen脳炎に類似の神経学的症状を示さなかった。これらの動物から得た血清はいずれもGluR3蛋白に対して免疫反応性を示したが,in vitroにおいては明らかな細胞傷害作用を示さなかった。以上の結果から,細胞傷害作用を示す抗GluR3抗体を得るには,さらに検討を要すると考えられた。 次に,実験2として,GluR3蛋白の接種後,Rasmussen脳炎に類似の神経学的症状を呈したウサギから得た抗GluR3血清をラットの大脳皮質に直接注入し,ウサギと同様の神経学的症状が惹起されるか否かを検討した。その結果,これらのラットの脳内では,注入されたlgGの注入側大脳皮質内での広範な浸潤が免疫組織化学法にて確認されたが,明らかな臨床症状は惹起されなかった。これらのラットの脳内では、補体C3はlgGに比べごく狭い範囲に浸潤するに止まっていたことから,抗GluR3血清の細胞傷害には補体系の活性化が必要であること,および,補体系活性化を制御する内在性の分子,すなわち補体制御蛋白が抗GluR3血清の細胞傷害の発現を抑制していることが示唆された。この結果の要旨は,第27回日本脳科学会(浜松)で発表した。 現在,実験1を継続するとともに,けいれん発作に伴う細胞傷害における補体制御蛋白の役割を検討中である。
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