2000 Fiscal Year Annual Research Report
タウ蛋白のリン酸化とアポトーシスおよび重合阻害に関する研究
Project/Area Number |
12770527
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 稔久 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (10294068)
|
Keywords | タウ蛋白 / リン酸化 / アポトーシス / XIAP / カスパーゼ / アルツハイマー病 |
Research Abstract |
アルツハイマー病脳においてはタウ蛋白リン酸化が亢進していることが知られているが、この機序は不明である。近年アルツハイマー病を含む神経変性疾患ではアポトーシスが関与する可能性が示唆されているが、我々の研究ではアポトーシスを誘導した神経系細胞においては、タウ蛋白が逆に脱リン酸化することが示されてきており矛盾があることが判明した。そこでアルツハイマー病の神経変性メカニズムにはアポトーシスを逆に阻止するファクターも同時に関与しているのではないかと想定して、内因性カスパーゼ阻害因子であるXIAPおよびNAIPの発現について検討をおこなった。ウエスタンブロットによる解析ではXIAPおよびNAIPはともにアルツハイマー病において発現量が増加しており、さらにXIAPについては断片化フラグメントが増加していることが判明した。また、免疫組織化学的検討においてはXIAPおよびNAIPはともにグリア細胞ではなく神経細胞に発現しており、アルツハイマー病脳における増加はタウ蛋白のリン酸化亢進と関係がある可能性が示唆された。さらに、XIAP遺伝子とタウ遺伝子を同時に強制発現させたHEK293T細胞はタウ遺伝子のみを発現させたHEK293T細胞に比べて、アポトーシスへの耐性が強く、さらに細胞にストレスを誘導した状態においてタウ蛋白のリン酸化が亢進していることが判明した。これらのことは、アルツハイマー病の神経変性では細胞死を誘導する何らかのストレスと同時にアポトーシスを逆に阻止するための内因性カスパーゼ阻害因子(XIAPおよびNAIPなど)が発現して拮抗関係となって、ゆっくりと神経変性が進行するという考え方をおおむね示唆するものである。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] Tsujio,I.,Tanaka,T., et al.: "Inactivation of glycogen synthase kinase-3 by protein kinase C delta : implication for regulation of tau phosphorylation."FEBS Letter. 469. 111-117 (2000)
-
[Publications] Tanaka,T., et al.: "Significance of tau phosphorylation and protein kinase regulation in the pathogenesis of Alzheimer disease"Alzheimer Disease Associated Disorders. 14,Supple 1. S18-S24 (2000)
-
[Publications] 武田雅俊,田中稔久 ほか: "一次変性痴呆症治療のためのタウ蛋白重合・蓄積阻害剤についての研究"精神薬療基金研究年報. 32. 33-40 (2000)
-
[Publications] 田中稔久,武田雅俊: "タウの異常と神経原線維変化の形成機序"脳の科学. 22(増刊). 123-127 (2000)
-
[Publications] 田中稔久,武田雅俊: "アルツハイマー型痴呆に関する知見の進歩タウ蛋白との関連について"Geriatric Medicine. 38. 1099-1103 (2000)
-
[Publications] 田中稔久,武田雅俊: "タウオパチー、"臨床精神医学. 30. 80-82 (2001)
-
[Publications] 田中稔久,高内茂,武田雅俊: "Paired Helical filament (PHF) KEYWORD精神 第2版"先端医学社(東京). 232(210-211) (2000)