2000 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトアルドース還元酵素発現マウスを用いた糖尿病性自律神経障害の発症機構の解明
Project/Area Number |
12770629
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
山岸 晋一朗 弘前大学, 医学部, 助手 (80301026)
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Keywords | ポリオール代謝 / トランスジェニックマウス / 神経節 / PKC活性 / Na^+ / K^+ATPase活性 / 形態計測 / アルドース還元酵素 |
Research Abstract |
糖尿病性神経障害の発症におけるポリオール代謝の役割を解明するため、ヒトアルドース還元酵素(hAR)発現トランスジェニックマウス(Tg)を高血糖状態にし、Tgに生じた神経障害について解析した。 TgおよびhAR陰性マウス(LM)を生後8週目にSTZ腹腔内投与により糖尿病とし、経時的に血糖、体重、痛覚閾値の測定を行った。病期12週目で、運動神経伝導速度(MNCV)、F波潜時を測定した後、末梢神経を摘出した。凍結保存した末梢神経標本を用いて、神経Na^+/K^+ATPase活性、神経protein kinase C(PKC)活性を測定した。腹腔神経節を含む大動脈周囲組織をグルタール固定し、エポン包埋標本を作製し、トルイジンブルー染色標本にて神経節細胞の形態計測を行った。 痛覚閾値は、5週では正常群に比し、糖尿病Tg群で低下したが、9週以後は有意に延長した。MNCVは、正常群に比し、糖尿病LM群で22%、糖尿病Tg群で30%遅延した。F波潜時は、糖尿病Tg群で、正常群、糖尿病LM群に比し21%延長した。Na^+/K^+ATPase活性は、正常群に比し、糖尿病LM群で46%、糖尿病Tg群で62%低下した。膜分画のPKC活性では、正常群に比し、糖尿病LM群で13%、糖尿病Tg群で28%低下した。腹腔神経節の形態計測では、平均核横断面積に差はみられなかったが、平均細胞横断面積が、糖尿病LM群で11%、糖尿病Tg群で28%、有意に低下した。 糖尿病Tgの神経では、有意なPKC活性低下、Na^+/K^+ATPase活性低下が生じ、形態学的にも、自律神経節でヒト糖尿病と同様の細胞萎縮を示した。このことから、ポリオール代謝の亢進は、神経障害発症に重要な役割を果たしており、自律神経障害にも関与している可能性が考えられた。今後、自律神経障害発症機構の解明およびARI投与による傷害抑制実験を行う予定である。
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