2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12770795
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
乾 健太郎 大阪市立大学, 医学部, 助手 (00291592)
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Keywords | 骨代謝 / 神経ペプチド / 軟骨細胞 / 破骨細胞 / 知覚神経 |
Research Abstract |
1)動物実験のモデル作成:日本白色家兎5羽を用い、ketamine(20m9/kg)とxylazine(1.5mg/kg)での全身麻酔下で後方から脊髄後根神経節ヘアプローチした。モデルとして、後根神経節のさらに中枢よりに存在する脊髄後根を5髄節に渡って切離する予定であったが、技術的な問題もあり全ての動物は手技中に脊髄損傷を来した。今後の、この実験系の再現性を含む問題点を鑑みた結果、動物実験での研究は断念した。 2)後根神経節神経細胞の単離:実体顕微鏡下で清潔操作下に取り出した後根神経節約20対を細切した後、DNase,collagenase,tripsinによる酵素処置を施した。約300μm孔のメッシュを通した後、10%ウシ胎児血清添加αMEMにて10cmculture dishに播種した。培養翌日からcytosine arabinoside処理することで、線維芽細胞、シュワン細胞を除去することができ、神経細胞の純粋培養を達成した。今後、骨形成細胞との相互作用を分析する予定である。 3)骨形成細胞に与えるneuropeptideの影響および炎症下における関節軟骨細胞へのneuropeptide影響:ウサギ肋軟骨成長軟骨細胞培養系(GC)と骨髄由来骨芽細胞様細胞培養系(BMC)およびウサギ関節軟骨細胞培養系(AC)で検索した。GCおよびBMCはcalcitonin gene-related peptide(CGRP)添加により、濃度依存性にそのalkaline phosphatase(al-p)活性が低下し、10^<-8>M以上の濃度で統計学的に有意な低下を認めた。また、このとき、細胞の増殖能には影響しなかった。すなわち、CGRPは骨代謝には負に作用する事が判明したが、これは、過去の論文の結果と多少異なるものとなった。しかしながら、炎症下では脊髄後角でのsubstance P,CGRPの遊離が増加していることが報告されているので、今回の結果は慢性疼痛・炎症疾患での後根神経節におけるCGRP産生の増加と、支配域での骨量減少との関連とは矛盾しないと思われる。一方、calcitoninの作用から類推すると、CGRPの作用は骨形成細胞よりもむしろ骨吸収細胞に強く影響することが考えられる。破骨細胞にはCGRP受容体が証明されていることから、今後、既に確立されている破骨細胞培養系における、neuropeptideの影響を検索する予定である。また、tumor necrosis factor alphaの存在下に培養した関節軟骨細胞はそのal-p活性が約60%低下するが、CGRPを同時に添加する事でその活性低下を40%にまで抑制できた。これは統計学的に有意であり、CGRPが炎症下にある滑膜細胞の炎症系ペプタイドや蛋白分解酵素産生を抑制し、関節炎の病理的状態を救済する作用が示唆されている事実を支持するものである。以上のように実験条件によりCGRPの作用は2面性があり、今後検討する必要がある。
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