2001 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者における手術後の高次脳機能低下の診断法と発生機序に関する研究
Project/Area Number |
12770839
|
Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
後藤 隆久 帝京大学, 医学部, 助教授 (00256075)
|
Keywords | 高次脳機能 / 全身麻酔 / 体外循環 |
Research Abstract |
本研究では、50歳以上の高齢者を対象に、術後2週間目の高次脳機能をミニメンタルテスト(MMSE)、Wechsler成人知能テストのうちSymbol-digit置換テストとdigit-spanテストおよび事象関連電位のp-300で測定し、術前値と比較した。また手術中および術後に血中S-100蛋白を測定した。 心肺バイパス(CPB)使用手術24例、非使用手術28例よりインフォームドコンセントを得た後、データを採取した。MMSEとdigit-spanは術前術後で変化はなかったが、symbol-digitはCPB使用患者で術後低下する傾向が見られた。しかし、データのばらつきが大きく、使用群と非使用群で変化率には有意差がなかった。P-300の潜時も術前と術後で有意な変化はみられなかった。また、p-300とMMSEなどの神経心理学テストの変化率との間に相関はなかった。 S-100はCPB使用患者ではCPB終了直後に最高値となり、その中央値は1.42ng/ml(範囲0.58-4.16)であった。一方、非使用患者では手術直後に最高値をとったが、その中央値は0.32ng/ml(範囲0.05-1.49)と、CPB使用患者より有意に低かった。S-100濃度は上記のどの高次脳機能テストの変化率とも相関しなかった。 S-100蛋白は脳神経損傷のマーカーとされる。この値が高次脳機能の変化と相関しないことより、術後の高次脳機能低下は神経の器質的損傷が原因ではないことが示唆される。また、心肺バイパス使用例のほうが神経損傷の程度が大きいことも示唆された。術後高次脳機能低下は、バルビツール酸などの神経保護薬では防止できないことが報告されているが、今回の結果はその理由を説明するものと考えられる。
|