2000 Fiscal Year Annual Research Report
細胞傷害性タンパクperforinの流産誘発因子としての可能性
Project/Area Number |
12770935
|
Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
日下部 健 大阪医科大学, 医学部, 助手 (20319536)
|
Keywords | perforin / 子宮NK細胞 / 脱落膜細胞 / 胎盤形成 |
Research Abstract |
ヒトを含む多くの胎生哺乳類には、胎盤内にNK細胞(子宮NK細胞)が出現する。この細胞は細胞傷害能タンパクのpore forming protein(perforin)を含む一方、胎盤形成に有用なサイトカインを産生する。ヒトの習慣性流産は、子宮NK細胞の機能異常に由る可能性がある。有効なモデルマウスを用いて、perforinと流産の因果関係について実験を行った。 RT-PCR法によりマウス胎盤内のperforinを調べると、妊娠9〜13日に最も強い発現が見られた。この傾向は子宮NK細胞の出現動態と一致した。また、この時期にリコンビナントIL-2(rIL-2)を腹腔内投与すると、胎盤内perforinの発現量が増加することが分かった。 妊娠9〜13日の間、通常の実験用C57BL/6(B6)マウスにrIL-2を投与しても、コントロールに比べ顕著な妊娠率の低下は認められなかった。一方、遺伝的にperforinを欠損するperforin knockout(PKO)マウスに、妊娠9〜13日でrIL-2を投与すると、妊娠率は50.1%に低下した。このPKOの胎盤では、基底脱落膜の顕著な肥厚と胎盤迷路部の変性が見られた。TUNEL法でアポトーシス細胞の組織学的検出を行うと、PKOの脱落膜細胞の陽性率はB6より有意に低かった。電顕観察では、B6の脱落膜細胞に典型的なアポトーシス像が見られたが、PKOでは遊走像などの活発な形態が観察された。 妊娠中期でのrIL-2投与は、perforinの発現量を増加させたが、perforinは流産には関与しないと思われた。むしろ、perforinを欠いた状態で体内IL-2濃度が上昇すると,胎盤の形態異常を誘導することが考えられた。本実験の結果は、胎盤内perforinの胎盤形成に関する働きという可能性を新たに示した。
|
Research Products
(1 results)