2000 Fiscal Year Annual Research Report
器官培養した蝸牛有毛細胞の浸透圧刺激に対する細胞内カルシウム濃度の変化
Project/Area Number |
12770939
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
橋本 敏光 弘前大学, 医学部, 助手 (30261449)
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Keywords | 器官培養 / 有毛細胞 / 浸透圧刺激 |
Research Abstract |
蝸牛の器官培養はこれまで困難とされており、有毛細胞の形態を保ったまま長期に培養することは容易ではないとされてきた。本年度の研究で蝸牛の形態をほぼ保ったまま数週間にわたり、培養するテクニックを開発した。具体的には蝸牛を各回転ごとに鋭的に切断し血管条をほぼ残したまま培養するものでこれにより比較的長期にわたる培養でも立体的に構造が変化しにくい。またその後の観察も容易である。さらに細胞栄養因子、特にGDNFの投与によりより安定した培養が可能となることが確認された。細胞栄養因子の効果についてはさらに検討していく予定である。 有毛細胞は正常の浸透圧の外液から低浸透圧液に置換されると数十秒から数分のオーダーで細胞内カルシウム濃度が上昇する。このときカルシウム濃度の上昇が認められるのは正常の80%以下に浸透圧を低下させた場合であった。浸透圧を低下されるほどカルシウム濃度の上昇は顕著であるが、40%以下に低下させると数分以内に細胞死がおこることが確かめられた。 メニエール病などにおいては長期間低浸透圧刺激が持続することが病態の基本的な変化であると考えられているが、このようなカルシウム濃度の変化を観察できた細胞はその後短時間(数時間から数日)で細胞死に至り、現時点では長期の培養は実現できていない。今後の課題として、浸透圧の低下と細胞死の率の関係を明らかにする必要がある。またカルシウム濃度の測定自体が細胞にダメージを与えている可能性もあり、カルシウム測光と細胞死の関連も検討する予定である。
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