2001 Fiscal Year Annual Research Report
正常および難聴モデルマウス内耳の細胞・細胞外基質間の接合とインテグリンの局在
Project/Area Number |
12770943
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
香取 幸夫 東北大学, 医学部・附属病院, 助手 (20261620)
|
Keywords | 内耳 / 血管条 / ラセン靭帯 / インテグリン |
Research Abstract |
正常マウスの蝸牛外側壁における膜貫通型糖タンパクbetal-integrinの局在を、高解像光学顕微鏡レベルで検討した。betal-integrinは蝸牛血管条の辺縁細胞の基底側ならびに中間細胞に発現していた。その発現の時期を出生0日から出生60日に至るまで内耳器官形成の過程で観察したところ、生後12日から15日の間にbetal-integrinの発現強度は飽和しており、血管上の組織学的構造が成熟する時期に一致していた。このbetal-integrinは腎の発生において上皮系細胞と間葉系細胞が接合する際に必須に発現することが報告されており、内耳の器官形成においても上皮系細胞である辺縁細胞と間葉系細胞である中間細胞の接合に重要であることが示唆された。 ヒト遺伝性難聴DFN3のモデルであるマウス(Brn4-knockout mouse、癌研究所細胞生物部より供与)の蝸牛外側壁の超微細構造を透過型電子顕微鏡により観察した。このマウスではラセン靭帯の線維細胞の異常や細胞外基質の減少が認められたが、血管条の異常は認められず、辺縁細胞および中間細胞、ならびにその接合部は正常様の形態を呈していた。この動物では線維細胞および細胞外基質に異常が見られたことから、分子レベルではintegrin groupのいずれかの異常が示唆されたが、血管条の構造およびbetal-integrinの発現は保たれていた。 以上から、betal-integrinは蝸牛外側壁の器官形成に関与する重要な分子であるが、遺伝性難聴DFN3に関しては直接的な影響を与えていないことが判明した。
|