2000 Fiscal Year Annual Research Report
膵胆管合流異常症における多段階発癌の機序解明のための遺伝子発現の解析
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12771061
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
小野 滋 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (00315962)
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Keywords | 膵胆管合流異常症 / 発癌 / 増殖活性 / 遺伝子変異 / p53 |
Research Abstract |
膵胆管合流異常症では膵液の胆道内への逆流と胆汁うっ滞の相互作用により胆道上皮の発癌に至る変化が生じてくると推測される.本研究では,本症における発癌機序を解明する目的で,胆嚢癌の発癌モデルを作成し,その発癌過程における胆汁酸および膵酵素の影響を検討した. 8週齢雌のゴールデンハムスターを用い,発癌剤3-methylcholanthrene(MC)3mgを混合したbeeswax pellet(BW)10mgを,胆嚢内に挿入した.ハムスターをMC単独群,胆汁酸(CDCA)添加群,CDCAおよびトリプシン添加群の3群に分け,5ヶ月間飼育した群と50日間飼育した群での腫瘍の発生状況を比較検討した.BWのみを挿入した群を対照群とした.HE染色にて腫瘍及び胆嚢の組織学的検索を施行し,免疫組織染色を用いてp53蛋白の発現を検索した.術後50日時の胆嚢癌発生率はMC単独群よりトリプシン添加群に高い傾向が認められた.胆嚢粘膜の異形成変化は非発癌例も含め全例に認められた.5ヶ月後の胆嚢癌の発生率もトリプシン添加群で高い傾向が見られ,平均腫瘍重量大きかった.一方,対照群には腫瘍の発生は見られなかった.組織型別では各群で有意の差はなかったが,発癌が認められなかった例も胆嚢粘膜の異型性変化が認められた.一方p53蛋白の発現率は発癌症例中では群間差はなく,非発癌例ではすべて陰性であった.さらに遺伝子変異について検索中である. ハムスターにおけるMCを用いた胆嚢発癌実験において,MC単独投与群より胆汁酸を添加した群,さらに胆汁酸にトリプシンを添加した群の方が腫瘍発生率が高く,平均腫瘍重量も大きい傾向が認められた.このことより胆汁酸は発癌促進作用を有しており,膵液はその発癌作用をさらに促進させることが示唆された.すなわち,膵胆管合流異常症は胆嚢癌の高危険因子として認識されているが,その発癌過程において膵液の逆流が重要な役割を果たしている可能性が改めて示された.現在遺伝子変異の検索を含めさらに検討を重ねているところである.
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