2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12771069
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
林 和弘 北里大学, 医学部, 助手 (00276081)
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Keywords | 毛包 / ラミニン / シンデカン-1 / 器官培養 / ペプチド |
Research Abstract |
目的:毛包の形成は、上皮組織の肥厚と、その直下の間葉系細胞の凝集に始まる。凝集した間葉系細胞は、反対に上皮組織に働きかけ、上皮組織の肥厚、陥入に始まる毛包形成過程を進行させる。細胞膜貫通型のプロテオグリカンであるシンデカン-1はこの凝集した間葉細胞に強く発現することから、毛包発生に重要な役割をするものと考えられてきた。シンデカン-1のリガンドの1つにラミニンがある。我々は、ラミニン分子のアミノ酸配列に中に、シンデカンと結合し、細胞接着をはじめとする様々な生物活性をもつペプチドAG73(RKRLQVQLSIRT)を見い出してきたが、今回、胎生期マウスのヒゲ(vibrissa)を用いて、そこに発現するラミニン受容体、ラミニンアイソフォームを明らかにし、さらに、器官培養下のヒゲ原基にAG73ペプチドを添加してその効果を調査することで、毛包形成における細胞と細胞外基質の相互作用を明らかにしようと試みた。 方法:胎生13〜17日のマウスの頬ヒゲにおけるラミニン受容体、シンデカン-1とジストログリカンの発現、ラミニン、ラミニン-α1鎖の発現をそれぞれ免疫組織化学で調べた。また胎生13日マウスのヒゲ原基を単離し、トランスフェリン(50μg/ml)添加IMEM培地をもちいた無血清器官培養を4〜7日間行った。AG73ペプチドを添加する際には、あらかじめ蒸留水で5mg/mlとしたペプチドを最終濃度250μg/mlまたは125μg/mlとなるように培養開始時から加えた。AG73ペプチドの配列をスクランブルとしたAG73Tペプチドをコントロールとして用いた。 結果と考察:シンデカン-1は凝集した間葉細胞に強く発現し、従来の報告と一致した。一方、dystroglycanは上皮基底部において強く発現するものの、間葉細胞ではほとんど発現しなかった。器官培養系では、AG73ペプチドを添加した際に毛包形成は強く抑制された。ヒゲ発生のすべてのステージを通じて、ラミニン分子の免疫陽性反応は上皮基底膜にそって認められたが、ラミニン-α1鎖の発現は上皮組織が陥入を始めた部位の基底膜からは失われ、ヒゲ形成時にはラミニン1以外のラミニンアイソフォームが発現することが判明した。こららの結果から、間葉細胞のシンデカン-1を介した細胞外基質との相互作用が毛包形成と深く関わる可能性が示された。In vivoにおいて実際にシンデカン-1のリガンドとなりこの相互作用を担うのはラミニン1分子ではなく、今後、他のラミニンアイソフォームを含めたsyndecan結合性の細胞外基質成分の発現様式を調査する必要がある。
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