2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12771104
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平賀 徹 大阪大学, 歯学研究科, 助手 (70322170)
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Keywords | 骨転移 / 乳癌 / IGF-1 / NF-kB |
Research Abstract |
まず、骨基質中に含まれる増殖因子の癌細胞の増殖に対する作用を明らかにするために、骨吸収を促進した培養系から得た培養上清をヒト乳癌細胞MDA-MB-231(以下、MDA-231)に作用させたところ、有意な細胞増殖の促進が認められた。この系に各種増殖因子に対する中和抗体を加えたところ、抗IGF I型受容体抗体のみに、促進された細胞増殖の抑制が認められた。この結果は、骨基質中の増殖因子が癌細胞の増殖促進に関与し、その主たる作用がIGFによることを示唆している。 次に、乳癌の骨転移におけるIGFの関与をさらに明らかにする目的で、MDA-231細胞にIGF I型受容体(IGFIR)遺伝子を導入した細胞(MDA-231/IGFIR)を樹立した。この細胞の骨転移形成能を、ヌードマウス左心室内移植による骨転移動物モデルを用い検討したところ、MDA-231/IGFIRでは有意な骨転移形成の促進が認められた。この一因としては、先に述べたような骨に転移した癌細胞に対する骨基質由来IGFの増殖促進作用が考えられる。 さらに、MDA-231/IGFIRにおける骨転移形成促進のメカニズムを明らかにするために、IGF-I刺激時の細胞内シグナルについて検討を行った。IGF-I刺激により、まずIRS-1がリン酸化され、PI-3キナーゼと複合体を形成し、さらにはAktをリン酸化することが明らかとなった。その反応性はMDA-231/IGFIRでより顕著であった。Aktの活性化はアポトーシス抑制との関連が広く知られており、MDA-231/IGFIRの骨転移促進の一因が骨転移巣における癌細胞のアポトーシスの抑制であることが示唆される。 以上の結果をもとに、平成13年度は、IGFによるNF-kBの活性化、及びその骨転移への関与についてさらに検討を進める予定である。
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