2000 Fiscal Year Annual Research Report
生体内の酸化還元酵素活性を利用した新しい象牙質接着システムに関する研究
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12771187
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
平 曜輔 長崎大学, 歯学部, 助手 (40226725)
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Keywords | 象牙質 / 接着 / ヘム / 鉄 / 酵素 / 蛋白質 / レジン / プライマー |
Research Abstract |
組織由来のヘム酵素を用いて接着システムを試作し,どの酵素がどのような条件下で有効であるかを調べることを目的とした. 試作したシステムは以下のように,エッチング剤,プライマー,接着剤の3つから構成された.実験では牛歯象牙質を被着体とし,接着システムの性能を接着試験によって評価した.エッチングには10%リン酸水溶液を用いた.プライマーとして用いるために,ヘモグロビン,チトクローム類,カタラーゼ,ヘミン,ヘマチンなど,ヘム誘導体の水に対する溶解性を調べた.接着剤としてはトリブチルホウ素,メタクリル酸メチル,ポリメタクリル酸メチルを含有する化学重合型レジンを使用した. ヘミンなど疎水性が強い物質ではプライマーの調整が困難であった.一方,親水性のチトクロームcは,メタクリル酸2ヒドロキシエチル(HEMA)と共に水に溶かしてプライマーとして用いた場合,接着強さは,牛由来のチトクロームcの濃度が0.01μmol/gで4.1MPa,0.1μmol/gで21.3MPa,1μmol/gで18.3MPaであった.これらは馬由来のチトクロームcの場合とほぼ同等で,市販の接着システムよりも高い値であった.さらに,酸性モノマーがなければ,接着強さが低くなる傾向も認められた.ヘム酵素の作用機序としては,接着界面付近のレジンの重合を促進すると考えられるが,蛋白質の構造によって接着強さが異なること,HEMAを併用しない場合はチトクロームcを用いても接着強さは7.8MPa以下であったことなどから,重合の効果だけでは説明が難しい.接着機構に関しては,来年度も引き続き調べる予定である. また,ヘマチンなど,チトクロームc以外で接着性改善の効果が認められる物質を発見することができた.本研究で得られた知見の一部は,現在論文として投稿中である.
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