補修用常温重合レジンの接着を阻害する義歯床劣化の実態の解明と対策

2001 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 12771191
• Research Institution: Kagoshima University
• Principal Investigator: 村口 浩一 鹿児島大学, 歯学部・附属病院, 助手 (30295258)
• Keywords: 義歯破折 / 義歯床修理 / 熱サイクル試験 / 繰返し荷重試験 / 硬質レジン前装冠 / 前装用硬質レジン / 表面性状 / 微細構造

Research Abstract

1.義歯床に破折を生じた場合,補修用常温重合レジンを用いて破折部位の接合を行なう.この時に,接合部の補強を目的として,補強線を埋入することも多いが,臨床的には,補修部位もしくはその隣接部位での再破折をしばしば経験する.
臨床的に行われる補修方法を再現して,加熱重合型床用レジンを補修用常温重合レジンで接合した試験片と,接合部に直交して各種補強線を埋入した試験片を作製して,三点曲げ試験を行った.さらに,耐久試験として熱サイクル試験を行った後の曲げ強さについても検討を行った.
その結果,補強線としてステンレス線もしくはクラスプ線を用いた場合に,同等の高い曲げ強さを示した.これらの試験片の,熱サイクル試験50,000回後の曲げ強さは,常温重合レジンのみで補修した場合よりも有意に高い値を示し,補修時の接合部の補強に有効であることが明らかとなった.
2.硬質レジン前装冠においては,口腔内で長時間経過すると変色や光沢の消失など前装部レジンの劣化が認められ,審美性の低下が引き起こされる.熱サイクル負荷は,前装用硬質レジンを劣化させる要因の一つと考えられるが,その影響は解明されていない.
市販されている前装用材料を用いて試験片を作製し,熱サイクル負荷を最大5万回付与した後に,肉眼的観察や色素浸透試験,表面粗さの測定,走査型電子顕微鏡による微細構造の観察を行ない,負荷前と比較を行った.
その結果,熱サイクル負荷により肉眼的には粗造感と光沢の消失が認められ,色素浸透試験による色素の浸透は増大した.表面粗さは負荷前に比べ増大しており,微細構造の観察ではクラックや陥凹の発生などが認められていた.
以上のことより,熱サイクル負荷は硬質レジンの表面性状に多くの変化を引き起こし,審美性を低下させていることが明らかとなった.

Research Products

• [Publications] 村口浩一, 南 弘之, 木村孝広, 倉茂尚徳, 大橋博文, 鬼塚 雅, 田中卓男: "熱サイクル負荷が前装用硬質レジンに与える影響 第1報 表面硬さと表面性状について"日本補綴歯科学会雑誌. 44巻・104回特別号. 44 (2000)
• [Publications] 南 弘之, 倉茂尚徳, 嶺崎良人, 久保真一郎, 鬼塚 雅, 田中卓男: "補強線を用いて補修した床用レジンの曲げ強さ"日本補綴歯科学会雑誌. 45巻・106回特別号. 98 (2001)
• [Publications] 村口浩一, 南 弘之, 木村孝広, 倉茂尚徳, 嶺崎良人, 鬼塚 雅, 田中卓男: "熱サイクル負荷が前装用硬質レジンの表面性状に与える影響"日本補綴歯科学会雑誌. 46巻・2号(掲載予定). (2002)