2001 Fiscal Year Annual Research Report
歯肉上皮細胞の加齢による遺伝子発現変化のDNAチップ分析と診断への応用
Project/Area Number |
12771305
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
多田 充裕 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (30260970)
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Keywords | 歯肉上皮細胞 / DNAチップ分析 / 加齢 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
継代培養を行なったヒト歯肉上皮細胞に、歯周疾患関連細菌のひとつであるActinobacillus actinomycetemcomitansから抽出したLPSを作用させたものと作用させないものの2グループに分け、遺伝子発現変化についてDNAチップ分析を行ったところ、LPS刺激によって種々の転写因子、細胞増殖因子、サイトカイン、接着分子、メタロプロテアーゼなどの遺伝子の他、抗菌タンパクの一つであるβ-defensinのmRNAの発現に変化が認められた。高齢化に伴って低下する口腔粘膜の防御機構には、抗菌タンパクの産生も大きく影響すると考えられることから、このβ-defensinに着目して検討を進めることとした。まず、口腔粘膜の上皮細胞での発現が報告されているβ-defensin-2(hBD-2)合成ペプチドをラットに免役し、hBD-2に対するモノクローナル抗体の作製に成功した。そして、外科処置時に採取された炎症性および非炎症性のヒト歯肉辺縁歯肉をパラフィン包埋した後に切片を作製し、hBD-2に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの培養上清を一次抗体として用い、labelled streptanidin biotin法で切片を染色し検鏡下で観察した。その結果、それぞれの組織切片において、上皮細胞にhBD-2が局在していることが確認できたが、炎症性歯肉の方が非炎症性のものより強く染色されていた。このことから、口腔内で最初の感染防御の役割を担う歯肉では、その上皮からhBD-2が産生され、歯周局所の生体防御の一助を担っていることが考えられた。以上より、DNAチップ分析が歯肉および歯周炎の病態の解析、診断に応用できることが示唆された。今後は、若年者、壮年者、老年者から得た歯肉上皮細胞を培養し、それぞれについてDNAチップ分析をすることにより、さらに詳細な検討を行いたいと考えている。
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