Research Abstract |
現在までに知られている中で最も選択的なプロテインホスファターゼ4阻害活性を示すことから極めて有望な抗癌剤リードとして注目を浴びている抗腫瘍活性天然物フォストリエシン(CI-920;phosphotrienin;(5R,6E,8R,9R,11R,12Z,14Z,16E)-2H-Pyran-2-one,5,6-dihydro-6-[3,6,13-trihydroxy-3-methyl-4-(phosphonooxy)-1,7,9,11-tridecatetraenyl]-,monosodiumsalt)とその誘導体の合成に有用なルートの開発を目的とし,合成研究を行った.その結果,Brown不斉アリル化反応による5位不斉中心の構築,閉環メタセシス反応によるα,β-不飽和-δ-ラクトン部の形成,Sharpless不斉ジヒドロキシル化反応による8,9位不斉中心の構築,Evansのanti選択的還元による11位不斉中心の構築,Stilleカップリングによる(12Z,14Z,16E)-共役トリエン部の構築,Bannawarthリン酸化および辻-野依還元的脱アリル化による9位リン酸エステル部の導入を鍵とし,全工程数25段階とこれまで報告[Boger et al. J. Am. Chem. Soc. 2001,123,4161-4167(35段階);Jacobsen et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2001,40,3667-3670(28段階)]されている中で最も短工程で全合成を達成した.その過程において複数の反応点をもつアクリラートの閉環メタセシス反応が高い位置選択性で進行すること,電子密度の異なる3つのオレフィンを有する基質に対するSharpless不斉ジヒドロキシル化が完全な位置およびジアステレオ選択的性で進行すること、ジアリルリン酸エステルとしてリン酸基を導入することで効率的な脱保護ができることを見い出した。
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