2000 Fiscal Year Annual Research Report
核酸塩基類似物質の相補的水素結合認識とその電気化学的制御に関する研究
Project/Area Number |
12771383
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
奥村 典子 岐阜薬科大学, 薬学部, 助手 (00275091)
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Keywords | 水素結合 / 分子認識 / 電気化学的制御 / 電荷移動錯体 / o-キノン / ジメチル尿素 |
Research Abstract |
本研究の目的は、核酸塩基類似物質の相補的水素結合認識を電気化学的にコントロールし得る、新規なモデル系構築である。本年度はこの目的達成のために、1)核酸塩基対類似の水素結合対を形成するモデル系の検索、2)そのモデル系の水素結合認識能の評価、および3)電気化学的挙動の観測をおこなった。今回、モデル分子認識系として、o-キノン類(OQ;フェナンスレンキノン、o-ナフトキノン)とジメチル尿素(DMU)との水素結合錯体(OQ-DMU)を選択した。また、その対照にはOQとメタノールとの水素結合錯体(OQ-MeOH)を用いた。 はじめに、中性のOQは、CH_3CN中でMeOH及びDMUと1:1の水素結合錯体を生成することを分光学的測定により明らかにし、OQ-DMUおよびOQ-MeOH錯体の生成定数を算出した。しかし、得られた値は10^<-2>程度であり、非常に小さい値であった。次に、CH_3CN中でOQの酸化還元電位を測定し、MeOH及びDMU濃度依存性を測定した。この結果から、o-キノン類アニオンラジカル(OQ^-)がMeOH及びDMUと作る水素結合錯体生成定数を算出した。結果、OQ^--MeOH系及びOQ^--DMU系では共に1:1の水素結合錯体を生成し、特にOQ^--DMU系では10^2もの大きな値が得られた。また得られた生成定数の温度依存性から、錯体の水素結合エネルギー(-ΔH^0)及び結合エンタルピー(-ΔS^0)を算出した。この結果、OQ-DMU系では-ΔH^0が小さいにもかかわらず、比較的大きな生成定数を与えることがわかった。これは、-ΔS^0が非常に小さいためであり、OQとDMUとの相補的な構造に起因することが示唆された。これらの結果から、構造的に支援される形の水素結合認識系では、電気化学的制御により弱い結合エネルギーで系全体のエネルギーが安定化されることが示された。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] B.Uno,N.Okumura,M.Goto,K.Kano: "n-σ Charge-Transfer Interaction and Molecular and Electronic Structural Properties in the Hydrogen-Bonding Systems Consisting of p-Quinone Dianions and Methyl Alcohol"Journal of Organic Chemistry. 65(5). 1448-1455 (2000)
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[Publications] 奥村典子: "有機π電子系ダイアニオンの分子認識に基づく分子化合物生成に関する研究"Revew of Polarography,. 46(2). 123-135 (2000)
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[Publications] Y.Esaka,N.Okumura,B.Uno and M.Goto: "Non-aqueous Capillary electrophoresis of p-Quinone Anion Radicals"Analytical Sciences. 17(1). 99-102 (2001)
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[Publications] B.Uno,N.Okumura,and T.Kawashima: "Fourth International Manuel M.Baizer Award Symposium on Organic Electrochemistry in Honor of J.Simonet and J.H.P.Utley"The Electrochemical Society,Inc(印刷中). (2001)