2001 Fiscal Year Annual Research Report
心肥大形成におけるカリクレイン・キニン系に関する研究
Project/Area Number |
12771421
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
屋山 勝俊 神戸学院大学, 薬学部, 助手 (30248108)
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Keywords | キニノーゲン / カリクレイン / キニン |
Research Abstract |
アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やアンジオテンシンタイプ1受容体遮断薬(AT1遮断薬)は、広範囲の循環器系疾患に対して有効なことから、臨床的に重要な薬物である。これら薬物の薬効発現はアンジオテンシンII(AII)産生阻害あるいはAT1受容体遮断に基づくが、ACEIがキニンの分解を阻害して内因性キニンの作用を増強すること、またAT1受容遮断はアンジオテンシンタイプ2受容体(AT2)を介してカリクレインを活性化しキニン産生を高めることから、これら薬物の薬理作用にキニンが関与するとの可能性が指摘されている。キニン類は、心肥大など循環器疾患の進行にブレーキをかけるものと考えられている。これまでの研究により心・血管組織独自にカリクレイン・キニン系を構成する因子の遺伝子発現を認め、心・血管組織独自にカリクレイン・キニン系が存在する可能性を示してきた。また、心・血管系疾患の動物モデルにおいてカリクレイン・キニン系を構成する因子の遺伝子発現について検討を行ったところ、心臓へ圧負荷がかかった早い段階においてブラジキニンタイプ2受容体(B2R)の発現に減少が認められ、この発現の減少はAIIにより調節されていることを明らかとした。一方、圧負荷のかかった血管ではB2R遺伝子の発現に変動は認められなかったが、AT2の発現に増加が認められた。しかしながら、循環器疾患におけるこれら遺伝子発現の変動がどのような生理的意義を持つかは不明である。これら意義を明らかにして行くには、キニノーゲン遺伝子を欠損したマウスを用いた研究が有用であると考え、現在、キニノーゲン遺伝子欠損マウスの作製に着手しており、このマウスが得られた後は、循環器疾患におけるカリクレイン・キニン系の役割に対し有用な情報が得られるものと考える。
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