2000 Fiscal Year Annual Research Report
慢性関節炎発症時における消化管障害性ならびに治癒反応の変化
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12771471
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
加藤 伸一 京都薬科大学, 薬学部, 講師 (90281500)
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Keywords | 非ステロイド系抗炎症薬 / COX-2選択的阻害薬 / アジュバント関節炎 / 繊維芽細胞増殖因子 / 一酸化窒素(NO) / プロスタグランジン / 胃粘膜 |
Research Abstract |
慢性関節炎発症時における消化管障害性および治癒反応の変化について検討し、これまでに以下のような知見を得た。 1.我々は既に、アジュバント誘発関節炎ラットにおいてはインドメタシン(IM)により誘起される胃粘膜損傷が関節炎の程度に比例して著明に増悪することを報告している。そこで胃粘膜を直接傷害するエタノールによる胃粘膜損傷についても同様の検討を行ったところ、関節炎ラットでは逆にエタノール誘起胃損傷の発生が有意に抑制されることを観察した。この抑制作用はそれ自身では損傷を惹起しない低用量のIMあるいは一酸化窒素(NO)合成酵素(NOS)阻害薬により有意に減弱した。また、シクロオキシゲナーゼ(COX)-2選択的阻害薬あるいは誘導型NOS(iNOS)選択的阻害薬によっても同様に関節炎ラットにおけるエタノール誘起胃損傷の抑制は有意に減弱し、さらに関節炎ラット胃粘膜ではCOX-2ならびにiNOSmRNAの発現が観察されたことから、この抑制作用にはCOX-2由来のプロスタグランジンおよびiNOS由来のNOが関与しているものと推察される。 2.慢性潰瘍の治癒反応について正常および関節炎ラットで比較検討したころ、関節炎ラットでは慢性潰瘍の治癒が正常ラットと比較して有意に遅延していることを観察した。一般に低用量のIMの連続投与は慢性潰瘍の治癒を遅延させることが知られているが、関節炎ラットの治癒遅延に対しては更に助長することが判明した。一方塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)を外因性に連続投与すると、関節炎ラットで観察された慢性潰瘍の治癒遅延は有意に改善した。一般に慢性潰瘍発症時には潰瘍部位においてbFGFの発現が増大することが知られているが、関節炎ラットの潰瘍部位におけるbFGF発現は正常ラットと比較して著明に低下しており、同様にインスリン様増殖因子(IGF)-1の発現も低下していた。ゆえに関節炎ラットにおける慢性潰瘍の治癒遅延は、潰瘍の治癒に重要である種々の増殖因子の発現低下に起因しているものと推察される。 今後、消化管障害の少ない抗炎症薬として注目されているCOX-2選択的阻害薬などについても、本モデルを用いて消化管障害性について詳細に検討する予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Shinichi Kato: "The roles of nitric oxide and prostaglandins in alterations og ulcerogenic and healing responses in adjuvant-induced arthritic rat stomachs."Alimentary Pharmacology and Therapeutics. 14(suppl.1). 18-25 (2000)
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[Publications] Shinichi Kato: "Effect of polaprezinc on impaired healing of chronic gastric ulcers in adjuvant-induced arthritic rats-role of insulin-like growth factors (IGF)-1."Medical Science Monitor. 7(1). 20-25 (2001)
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[Publications] Shinichi Kato: "Delayed healing of gastric ulcers in adjuvant arthritis rats-role of acid and basic fibroblast growth factor-."Digestion. (in press). (2001)