2000 Fiscal Year Annual Research Report
精神障害モデルとしての大麻による異常行動発現機構の解明
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12771472
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
三島 健一 福岡大学, 薬学部, 助手 (00320309)
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Keywords | THC / カンナビノイド受容体 / 2-アラキドノイルグリセロール / アナンダミド / 学習・記憶 / カタレプシー / 攻撃行動 / 多発性硬化症 |
Research Abstract |
大麻の活性成分であるΔ^9-tetrahydrocannabinol(THC)に特異的なカンナビノイド(CB_1)受容体の内因性リガンドのアナンダミド(anandamide)や2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)およびCB_1受容体拮抗薬のSR141716Aを用いて,THCによって惹起されるカタレプシー,攻撃行動および空間認知障害に対する影響を調べた.その結果,SR141716AはTHCによる行動変化をすべて抑制した.一方,anandamideや2-AGは,空間認知障害を発現したが,カタレプシーや攻撃行動には影響しなかった.つまり,これらの内因性リガンドは,THCがもつ一部の作用を示したが,THCのもつ全ての作用を必ずしも有していないことが判った.次に,THCによって惹起されるカタレプシーおよび空間認知障害に対するグルタミン酸受容体の役割を調べた.その結果,THCによって惹起されるカタレプシーには,NMDA受容体が,空間認知障害には,NMDA受容体およびAMPA受容体の両受容体の関与が示唆された.さらに,多発性硬化症の動物モデルである実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)に対するTHCの影響を,グルタミン酸遊離阻害薬のriluzoleと比較した結果,両薬物共にEAEで発症した運動機能障害を著明に改善したが,THCはriluzoleより有効であった.以上の結果から,THCによって発現する行動変化は,CB_1受容体を介することは明らかであるが,用量,飼育条件などの環境因子,作用部位,内因性リガンドの存在などによってかなり異なった行動変化を示すため,THCにはそれぞれの行動変化によってCB_1受容体以外の作用機序を有すると考えられる.また,THCを利用することで,ヒトの精神機能の調節機序の解明や,精神障害や神経変性疾患に対する新しい薬物の開発につながるものと期待される.
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