2000 Fiscal Year Annual Research Report
倫理的ジレンマを伴う看護管理者の意思決定プロセスの分析
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12771502
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Research Institution | College of Nursing Art and Science, Hyogo |
Principal Investigator |
勝原 裕美子 兵庫県立看護大学, 看護学部, 講師 (60264842)
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Keywords | 看護管理者 / 倫理的ジレンマ / 意思決定 |
Research Abstract |
本研究では、医療施設の看護部長が抱える倫理的ジレンマの記述を行った。平成12年11月から12月の間に、10名の看護部長を対象に、半構成的質問項目を使用して面接を行った結果、倫理的ジレンマにまつわる16の事例を聞き取ることができた。次に、一つずつの事例について、倫理的ジレンマを生じさせている道徳的要求が何であるかという視点から内容分析を行った結果、13の道徳的要求が明らかになった。それらは、(1)個人の誇りを守る、(2)女性性を受け入れる、(3)日本的文化規範に従う、(4)看護の質を保証する、(5)患者の権利を守る、(6)組織の利益を上げる、(7)労働者の権利を守る、(8)看護部門を代表する、(9)政治的圧力を受ける、(10)住民の要望をきく、(11)医師パワーと共存する、(12)組織のルールに従う、(13)法を守る、である。 さらに、看護部長がどのような立場(アイデンティティ)に立つかという視点でこれらの道徳的要求を整理した。その結果、一個人としての看護部長は、(1)、(2)、(3)を、看護職としては、(4)と(5)を、経営者としては、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)を、組織人としては、(10)、(11)、(12)をもっており、(13)はどの立場にあっても必要な道徳的要求と考えられた。 これらの結果から、様々なアイデンティティを持つ看護部長は、それぞれのアイデンティティに伴って必要とされる道徳的要求のぶつかり合いの中で倫理的ジレンマを感じていることが明らかになった。今後は、役割葛藤と倫理的ジレンマの関係性、13の道徳的要求のジレンマへの影響度、一人一人の看護部長の道徳推論過程などを明らかにしていくことを課題と考えている。
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