2000 Fiscal Year Annual Research Report
長時間側臥位保持の安楽性と筋緊張度およびエネルギー代謝の関係
Project/Area Number |
12771505
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Research Institution | Kobe City College of Nursing |
Principal Investigator |
柴田 しおり 神戸市看護大学, 看護学部, 専任講師 (70254480)
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Keywords | 安楽 / 長時間臥位 / 筋エネルギー代謝 |
Research Abstract |
本研究の目的は、長時間臥位を余儀なくされるような患者の安楽性に焦点をあて、ベッド上における側臥位の主観的安楽性と生理学的指標である筋エネルギー代謝の関係について検討することであった。本年度においては、長時間臥位本研究への参加の同意を得た若年女性4名を被検者とし、ベッド上で80分間の左側臥位をとらせ、その時に安楽枕を膝関節間に使用する場合(条件1)と使用しない場合(条件2)について、右外側広筋から筋エネルギー代謝を測定した。筋エネルギー代謝は近赤外線分光法を用いて20分間毎に4分間測定し、総ヘモグロビン量(Total-Hb)、酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb)および脱酸素化ヘモグロビン(deOxy-Hb)を求めた。また、主観的な安楽(または苦痛)度についても20分毎に聞き取りを行った。なお、条件1と条件2は日を変えて実施した。 条件1および条件2ともに、Total-Hbは臥位開始時から徐々に低下して40〜60分後に最低値となり、その後概ね一定値を保った。開始時を100%とすると、両条件ともに92%程度まで低下し、両者に統計学的な差は認められなかった(p>0.05)。Oxy-Hbも同様な振る舞いで95%程度まで低下した。また、deOxy-Hbの低下率は著しく、開始60後には両条件ともに約80%程度にまで減少した。条件間で、Oxy-HbおよびdeOxy-Hbの低下率に差は見られなかった(p>0.05)。Total-Hbの低下は、血流量の減少を意味していると考えられるが、両条件ともにその低下が見られたことから、安楽枕の使用の有無は血流量の多寡に直接影響しないと思われた。Oxy-Hbの低下率に比べ、deOxy-Hbの減少率が大きかったことは、血流量の低下を補償するためではないかと推測された。 条件1における主観的な安楽(または苦痛)度の評価は、60分目で「しびれ感」「圧迫感」「だるさ」、80分目で「痛み」「感覚麻痺」などであった。これに対して条件2では、40分目で「しびれ感」「「だるさ」の訴えがあり、60分目で「関節痛」「感覚麻痺」など、条件1に比べて主観的苦痛が早期に出現する傾向が見られた。 本研究において、主観的な苦痛感が安楽枕を使用しない条件2でより早期に出現したにも関わらず、筋エネルギー代謝動態が条件間で差異が見られなかったことから、主観的な案楽(または苦痛)度と筋エネルギー代謝動態とは必ずしも関係しない可能性が示唆された。しかしながら、測定部位が右外側広筋1個所であったことや被検者が4名と少なかったことなど、今後さらなる検討が必要と思われた。
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