2001 Fiscal Year Annual Research Report
長時間側臥位保持の安楽性と筋緊張度および筋エネルギー代謝の関係
Project/Area Number |
12771505
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Research Institution | Kobe City College of Nursing |
Principal Investigator |
柴田 しおり 神戸市看護大学, 看護学部, 講師 (70254480)
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Keywords | 安楽性 / 同一体位 / 筋エネルギー代謝 |
Research Abstract |
本研究の目的は、長時間臥位を余儀なくされるような患者の安楽性に焦点をあて、ベッド上における側臥位の主観的安楽性と生理学的指標である筋エネルギー代謝の関係について検討することであった。本年度においては、本研究への参加の同意を得た若年女性10名(年齢22.5±5.0歳、身長156.5±4.7cm、体重49.5±5.7kg)を被検者とし、左側臥位(60度背臥位)を90分間保持してもらい、膝関節角度を鋭角(≦90度)にした場合(条件A)と鈍角(>90度)にした場合(条件B)について、右大殿筋から筋エネルギー代謝および組織酸素飽和度(StO_2)を測定した。筋エネルギー代謝は近赤外分光法を用いて15分ごとに2分間測定し、総ヘモグロビン量(Total-Hb)、酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb)および脱酸素化ヘモグロビン(dcOxy-Hb)を求め、初期値を100とし経時的変化を相対値で表した。また、主観的安楽(または苦痛)度については30分ごとに聞き取りを行った。なお、条件AとBは日を変えて実施し、順序効果を避けるためにランダム順で行った。 90分間側臥位での膝関節角度の平均値は、条件A:81.4±3.8度、条件B:110.0±2.7度であり、その差は有意であった(t=13.6,P<0.001)。初期値に比べOxy-Hbは両条件ともに時間ととも1こ徐々に増加し、条件Aでは75分目以降、条件Bでは30分目以降初期値に比して有意に高値であった(P<0.05)。一方deOxy-Hbは漸減し、条件Aでは45分目以降、条件Bでは60分目以降有意に低値であった。StO_2は、両条件ともに漸増し45分目以降で有意に高値を示した。また、苦痛に関する主観的評価では、両条件ともに経時的に苦痛の程度は増加したが、その程度はB条件でやや大きかったが統計学的に有意ではなかった。 姿勢保持のために右大殿筋は微弱に活動するものと考えられるが、その活動を維持するために当該筋への血流の再配分が行われ、その結果両条件におけるOxy-HbおよびStO_2は漸増したものと推測された。条件Bにおける早期(30分目)のOxy-Hbの有意な増加は、臥位姿勢の不安定さから生じる筋への負担を反映し、それを補償するためにより早期に増加した可能性があると考えられた。有意ではなかったものの苦痛の主観的評価においても条件Bが条件Aに比べ高値を示しており、他の筋群や抹消における筋エネルギー代謝やStO_2動態についても検討していくことが求められると思われた。
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