Research Abstract |
平成12年度に実施した全国の介護老人保健施設の看護婦・士に対する調査結果をふまえ,平成13年度は,介護老人保健施設の看護婦が,入所者のせん妄の兆候や症状をどのように把握し,看護ケアに結び付けているのか,その判断過程を明らかにする目的で看護婦への面接調査を実施した. 対象は,道内の介護老人保健施設に勤務する看護婦であり,最近3ヶ月以内に経験したせん妄状態の痴呆高齢者の事例について,インタビューを行った.内容は,(1)その入所者のせん妄の兆候や症状の内容,(2)いつ,せん妄状態であると気付いたか,(3)把握した症状などをどのように解釈して看護ケアの方法を選択したか,(4)実施した看護ケアおよび治療は何か,(5)治療および看護ケアに対して入所者はどのように反応したかである.インタビューは,各々1時間から2時間を1回実施し,許可を得てテープレコーダーに録音した.録音したテープから逐語録を作成し,グランデッド・セオリー・アプローチを参考に分析を行った. 分析の結果,入所者の環境の変化に伴い一時的な混乱状態に陥った事例が多く語られた.看護婦は,入所者の心ここにあらずの様子,不明瞭な会話,錯視,険しい表情,「家に帰る」と言う事などを,せん妄に気付く兆候としてあげた,これらは,平成12年度に実施した調査結果と同様の内容であった.看護婦はこれらの症状を環境の変化に対する戸惑い,緊張,ストレスと捉えていた.実施したケアは,対象との関わりを多く持つ,離床を促す,本人のニーズをこちらから確認して満たす,薬の調整などであった.これらのケアによる入所者の反応として,落ち着く,満足な様子などが挙げられた. 今後は,さらに例数を重ねつつ詳細な分析を継続し,看護婦の判断過程を明らかにしていく予定である.
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