2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12780002
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東郷 俊宏 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (30303902)
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Keywords | 中国医学 / 諸病源候論 / 疾病分類 / 医学史 |
Research Abstract |
中国隋代に太医博士、巣元方が勅命を奉じて編纂した『諸病源候論』(610年成立)は、病因、病態、病理について専門に論じたほとんど唯一の書として中国医学史上、特筆される文献である。本書は漢代以降に成立した医学文献の内容を豊富に継承しつつ疾病を67門、1739種に分類し、その疾病定義は日本、中国の別を問わず後世の医学書にしばしば引用されるのみならず、疾病分類のありかたも後世の医学全書においてながく踏襲されてきた。 本年度は本書の最善本(宋版、東洋医学善本叢書所収)を用い、経文のデータベース入力作業をほぼ完了した。次年度はこの成果をもとに、本書と先行する医学経典(『黄帝内経素問』『黄帝内経霊枢』『傷寒論』『金匱要略』)、および本書の疾病分類を積極的に採用した日本、中国の主な医学全書(『医心方』『太平聖恵方』『聖済総録』)とを比較し、本書が旧来の医学理論をどのように取り込み疾病の分類を行ったか、また後世の医学全書において本書の疾病分類がどの程度忠実に採用されてきたかを疾病ごとに検討する。また本書に項目として立てられた疾病の数は膨大な量に上るが、分類に当たって疾病のいかなる側面(自覚他覚症状・時間経過・身体所見)が重視されていたかを検討する。以上の検討によって中国医学史における疾病分類書としての本書の位置づけが明確にされると同時に、中国医学における疾病定義、分類の特質が明らかにされこととなろう。
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