2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12780006
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
北澤 一利 北海道教育大学, 教育学部・釧路校・(文部科学教官)助教授 (00204884)
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Keywords | 医療行為 |
Research Abstract |
はじめに、日常的に医療行為が行われている重度養護学校などを中心に、現場では教員がどのような対応をしているか実態を調査した。次に、医師法上の医療行為の定義、さらに過去の判決に見られる医療行為の定義を検討した。その後、札幌にある養護学校に調査に出向き、保護者と教員にインタビュー取材した。この結果、教員が医療行為を行わないことは、医師法上の禁止規定に抵触しないが、学校教育法で定められた教員の義務の放棄につながると考えるようになった。要旨は次の通りである。 本論は、養護教諭の医療行為を認める方向で制度改正をうながすために書いたもので、養護教諭の医療行為をとがめたり、これを厳しく禁止するために書いたものではない。また、あくまでも制度を問題にしているのであって、実際に養護教諭が現場で医療行為を行っているかどうかは問題にしていない。 養護教諭には教育活動上必要となる医療行為を安全に行うだけの専門的知識と技能と経験があると考える。むしろ、医療行為を認めることで養護教諭はより積極的に教育活動を行うことができると信じる。本論では、(1)救急処置が医療行為であることを説明し、(2)養護教諭は躊躇せず医療行為を行う法的義務と能力があること、(3)その結果医師法に違反することもやむを得ないことを論じた。 従来行われてきた救急処置は、判例と照らし合わせれば完全に医療行為の定義を満たす。これを救急処置と言い換えて、医療行為ではないものと見なすことには無理がある。また、これまでほとんど事故が起こっていない事実を見ても、養護教諭に救急処置という「医療行為」を認めても何ら問題はない。医師法が現場の活動を制限している例は、他にもある。近年、介護福祉士が高齢者の介護を行う際に医療行為が行えないと言う問題があり、現場では非常に不自由している。介護福祉士の医療行為を禁じることが、かえって危険を増大する結果になることもある。養護学校でも同じだ。養護教諭が医療行為を行うことができないために、わざわざ看護婦の付き添いを求めなければならない現場がある。これでは、なんのための養護教諭かわからない。学校内の医療行為は、養護教諭に任せることで、養護教諭の活動の場が広がり、看護婦に職場を浸食される必要もなくなる。私は、養護教諭の本来の仕事を尊重し、医療行為を正々堂々と行うべきであると考える。
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