2000 Fiscal Year Annual Research Report
頭部回転運動が脊髄運動ニューロンと筋活動の変化に及ぼす効果
Project/Area Number |
12780016
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
渡部 かなえ 信州大学, 教育学部, 助教授 (50262358)
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Keywords | 運動プログラム / 頭部回転運動 / ヒラメ筋 / 筋電図 / 加算平均 |
Research Abstract |
身体のある部位の随意運動は、共同筋や拮抗筋だけでなく、遠隔筋活動にも影響を及ぼす。特に頭部の運動は全身の運動や姿勢の主導的な役割を果たす。また下肢筋は、同じ頭部回転運動時でも、姿勢や重心保持に主要な役割を果たす立位と、その役割から開放されている座位とでは、中枢から出される運動命令は異なっていると予想される。本研究はそれを筋活動変化から観察することを目的とした。被験者は健常な成人男女10名で、被験筋は左胸鎖乳突筋(頭部回転運動の主導筋)と両脚ヒラメ筋(伸筋)であった。頭部の運動は右急速水平回転運動で、ヘッドギアに装着したゴニオメーターで計測した。筋電図・頭部回転運動の記録とも、胸鎖乳突筋の筋活動をオンセットとして、32回の加算平均を行った。実験の結果から、頭部回転運動自体は、立位・座位とも同様に行われていた。しかし下肢筋活動に現れる変化は異なっていた。立位では、ほぼ全被験者で、主導筋活動開始前に右下肢伸筋に促通が、左伸筋に抑制が発現した。主導筋活動開始によって、右伸筋には抑制が発現し、左伸筋には促通が発現した。この変化は頭部回転運動開始後に強化された。ところが座位では、全被験者に共通する変化パターンはみられなかった。又、主導筋活動に先行して下肢筋活動変化が始まることはまれであった。以上のことから、運動プログラムの頭部回転運動それ自体の遂行にかかわるメインの部分は、姿勢・肢位に関わらず同一であるが、下肢筋への運動命令の部分は、重心や姿勢保持のための命令が必要ならば組み込み、不要ならば組み込まないという、フレキシブルな構造になっていると推察された。 この研究成果は、平成13年度4月に千葉大学で開かれる「第17回運動調節機構とその病態生理研究会」で報告し、その後、専門誌に投稿する予定である。
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