2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12780018
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
柳原 大 豊橋技術科学大学, 体育・保健センター, 助教授 (90252725)
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Keywords | 小脳 / 代謝型グルタミン酸受容体 / 自律神経系 / マウス |
Research Abstract |
自転車の乗り方や水泳の動作といった運動スキルの記憶は、ニューロンからニューロンへの情報伝達の場であるシナプスの可塑性を基礎過程としていると考えられている。現在までに、中枢神経系において運動スキルの記憶に重要な役割を果たしている場所としては小脳があり、実際に歩行の適応制御や前庭動眼反射の適応制御に小脳長期抑圧が重要な役割を果たしていることが証明されている。ところで、小脳は歩行や眼球運動などの体性運動の制御のみならず、心臓・血管系をはじめとする自律神経系の制御にも関与している。以前の研究は、ウサギまたはラットを対象に条件刺激として音刺激、無条件刺激として耳あるいは尾への電気刺激の呈示を組み合わせ、数秒間の音刺激呈示中に漸進的に心拍数が低下する徐脈を観察し、この条件付け徐脈反応が小脳虫部の破壊により減弱されることを報告している。本研究では長期抑圧の発現にも深く関わる代謝型グルタミン酸受容体1型(mGluR1)が条件付け徐脈の発現においてどのように機能しているのか明らかにすることを目的とした。逆進性遺伝学的手法によりmGluR1を欠損させたmGluR1ノックアウトマウス、小脳プルキンエ細胞だけにmGluR1が発現し、他の脳組織には発現していないmGluR1レスキューマウスを用いて、その条件付け徐脈について詳細に調べた。条件刺激(音刺激)と無条件刺激(尾部への電気刺激)を組み合わせた恐怖条件付けパラダイムにより、すべてのマウスにおいて条件付け徐脈の獲得・保持・消去が同様に観察されたが、音刺激呈示中の徐脈において、mGluR1ノックアウトマウスに顕著な特徴が観察された。mGluR1ノックアウトマウスは野生型マウスに比べて著しく大きな徐脈を示した。一方、小脳プルキンエ細胞にのみmGluR1が発現しているmGluR1レスキューマウスは野生型マウスと同様のレベルの徐脈を示した。これらの結果より、小脳プルキンエ細胞におけるmGluR1は、小脳が介在した自律神経系の制御に関与し、条件付け徐脈において、条件刺激に対する心拍応答(徐脈)の大きさの調節に関与していることが結論される。
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