2000 Fiscal Year Annual Research Report
スポーツ傷害を通して語られる競技者からのメッセージ
Project/Area Number |
12780042
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
上向 貫志 武蔵大学, 人文学部, 専任講師 (40291661)
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Keywords | 傷害 / 痛み / 心理的了解 |
Research Abstract |
スポーツ選手にとっての怪我やその痛みは、競技者としてのアイデンティティーを危機にさらしてしまう危険因子である。身体(怪我・痛み)を通して非言語的に語られる意味合いの検討は、これまでの研究の視点では皆無であり、本研究ではスポーツによる怪我(痛み)を通して語られる意味の分析、つまり怪我(痛み)を心理学的に了解することを目的として行われた。本年度(平成12年度)では研究1として、横断的な質問紙調査を実施し、怪我の経験と心理・行動的観点からの検討を試みた。 調査内容に関しては、リハビリテーション過程での心理的変容に関する質問20項目、リハビリテーション過程でのソーシャルサポートに関する質問8項目、およびリハビリテーション過程での行動的変容に関する質問12項目を作成した。調査対象者は、過去に1週間以上の活動停止を余儀なくされた怪我を負ったことのある大学生競技者230名を対象として行われた。 主な結果としては、過去に重篤な怪我を負った経験のある選手、あるいは怪我を頻繁に繰り返してしまう傾向のあった選手は、他の選手を羨望する傾向が高く、リハビリテーション中の課題よりも復帰後の期待や不安、さらに負傷前のネガティブな状況要因を回顧する傾向が高いことが明かとなった。さらに、周囲からの人的サポートを受け入れる傾向が低く、行動的にも気分のリフレッシュや思考活動の切り替えに関して上手く処理できない者の割合が多い傾向であった。 次年度(平成13年度)では、本分析に同一性形成という視点を加え再検討し、また一流競技者の中でも怪我や痛みが選手としてのターニングポイントとなったケースを対象として、インタビューによる質的分析を行う予定である。
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