2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12780050
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Research Institution | St. Catherine University |
Principal Investigator |
矢野 宏光 聖カタリナ女子大学, 社会福祉学部, 専任講師 (90299363)
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Keywords | 中年期 / ウルトラマラソン / 自尊感情 / 孤独感 |
Research Abstract |
近年、一般のジョギング愛好者がウルトラマラソン(以下UM)という1日で100キロを走り抜くという限りなく過酷なマラソンに参加する傾向が認められており、しかもこの競技への参加人数は年々増加している。UMという新しい競技は、走るという最もシンプルでありながら最も過酷な競技の一つである。このUM参加者の特徴として、中年期の参加者が全体の80%を占め、さらに、その参加者の持つ不安傾向が非常に高いことが、著者らによる先行研究から明らかになっている(矢野ら,1995,1996,1997)。本来、中年期は人生の中でも非常に安定した時期として認知されてきた。しかし、社会が急激に変容を遂げると共に人間の趣味志向も変化していることが予想される。すなわち、中年期参加者の志向性が、何らかの要因により過酷な方向へと動いていると考えられる。著者は、この行動は、中年期の持つ内的な自己への意識とそれらを取り巻く外的な要因から派生し、それが中年期参加者の行動へ影響を与えているのではないかと考える。つまり、中年期参加者は、個人を取り巻く仕事や家族などの社会環境要因と深く関わり合いながら、この過酷なスポーツに挑むことを、自己の心理的解決のきっかけの場として選択しているということである。 平成12年度:過酷なスポーツに挑む中年期参加者の性格特性と、自己に対する評価と感情に関する分析 1.調査方法と手続き:UMにエントリーしてくる参加者に対し、事前に受付状況から得た情報によりゼッケン番号とリンクさせ、既にナンバーリングされた調査用紙を郵送により参加者に配布した。そして大会前日の受付時に調査用紙を回収した。2)調査期間:2000年4月〜2000年10月 3)調査対象:ウルトラマラソンの参加者800人 4)調査用紙の構成と内容:a)参加者の属性 b)参加動機の調査項目 c)TypeA検査 d)自尊感情尺度 e)孤独感尺度 以上の5つを調査用紙内に配置し、調査用紙を作成した。また、併せて中年期参加者に対しては、直接面接法による面接調査も行った。 2.結果と考察 平成12年度の調査から以下のことが判明した。1)30代の参加者の自尊感情は40代、50代の参加者に比べ有意に低いことが特徴的であった。性別による自尊感情の有意差はみられなかった。2)孤独感情においては男性が女性に比べ有意に高いことが判明した。年代による孤独感情の有意差は認められなかった。 また、「もしケガや病気のため、UMをやめなければいけなくなった時にやめられるか」という設問に、対象者の27.3%が「やめられない」と回答している。UM参加者は現在、自己の存在や価値を確認する場としてUMを選択している感があるが、もしこれが何らかの理由により損なわれることになった場合、代替を何に求めていくかという問題は、現代人の抱える大きなテーマであり、この問題解決は著者における今後の大きな研究課題でもある。
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