2000 Fiscal Year Annual Research Report
パプアニューギニア高地における伝統農耕の環境保全機能
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12780053
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梅崎 昌裕 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (30292725)
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Keywords | 環境保全 / パプアニューギニア / 人口増加 / 伝統農耕 |
Research Abstract |
伝統農耕は環境を破壊する側面と保全する側面を併せ持っている。そもそも、畑を開く際には一次植生を切り開く必要があり、人間が農耕に依存して生活することによる森林の減少は不可避的なものであるといえよう。一方、耕作中の畑の周りにマメ科の樹木を植えたり、休耕期間の畑に地力回復を目的とした植林を行ったり、鋤き込むための肥料として利用される特定の植物を畑の周りに植えるという行動は、積極的な環境保全行動であるということもできる。伝統農耕と自然環境との具体的なかかわりを解明することを目的として、パプアニューギニア南高地州タリ盆地において予備的な調査を行った。対象地域は、代表者が1993年より人々の適応に関するデータ収集を行ってきたタリ盆地における3つの村である。結果は、以下の6点に集約される。1.人々が頻繁に植え付けを行う樹木ほど、自然に生える頻度も高かった。2.土壌にとって良いと思われている樹木は、実際にも頻繁に植えられていた。また、そのような樹木は、自然に生える頻度も高かった。3.土壌にとって良いと思われている草本は、自然に生える頻度も高かった。4.植物が土壌にいいかどうかの判断は地域間で異なっており、3通りの組み合わせの中ではWenaniとHeliが最も異なっており、WenaniとKikidaが最も似かよっていた。5.対象三地域の比較では、植え付けられた植物の数はHeli<Wenani=Kikida、自然に生えた植物の数はHeli<Kikida<Wenaniであり、それぞれの地域における土壌の肥沃さ(Heli<Kikida<Wenani)と関係しているかもしれない。6.HeliとWenaniにおいて、男性は女性に比べて樹木を土壌に良いと考える傾向がみられたが、Kikidaではそのような性差はみられなかった。 以上より、タリ盆地における伝統農耕では、特定の樹木を植え付け・特定の草本を鋤き込むことが土壌の肥沃さを維持するために重要であると考えられており、結果的にそれらの植物は自然に生える頻度も高いことが示唆された。従って、歴史的にみれば、伝統農耕により有用な植物の生息密度が選択的に増加してきたと考えることもできる。しかしながら、それぞれの植物に対する考え方、植樹行動には地域差・性差がみられ、この背景にはもともとの環境条件の違いが関与している可能性もある。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Umezaki M,Kuchikura Y,Yamauchi T.,Ohtsuka R.: "Impact of population pressure on food production : an analysis of land use change and subsistence pattern in the Tari basin in Papua New Guinea Highlands"Human Ecology : An Interdisciplinary Journal. 28(3). 359-381 (2000)
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[Publications] Yamauchi T,Umezaki M,Ohtsuka R.: "Energy expenditure, physical exertion and time allocation among Huli-speaking people in the Papua New Guinea Highlands"Annals of Human Biology. 27. 571-585 (2000)
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[Publications] Yamauchi T,Umezaki M,Ohtsuka R.: "Physical activity and subsistence pattern of the Huli, a Papua New Guinea Highland population"American Journal of Physical Anthropology. (In press).
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[Publications] 梅崎昌裕: "パプアニューギニア高地におけるブタ飼養の現在的意味"動物考古学. 15. 53-80 (2000)
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[Publications] Umezaki M,Yamauchi T,Ohtsuka R.: "Time allocation to subsistence activities among the Huli in rural and urban Papua New Guinea."Journal of Biosocial Science. (In press).
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[Publications] Umezaki M,Natsuhara K,Ohtsuka R.: "Protein content and amino acid scores of sweet potatoes in Papua New Guinea Highlands."Ecology of Food and Nutrition.. (In press).