2000 Fiscal Year Annual Research Report
国際的アグロネットワークの形成とその構造に関する地理学的研究
Project/Area Number |
12780054
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
伊藤 貴啓 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (10223158)
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Keywords | 国際的アグロネットワーク / 農業の国際化 / フードシステム / 地域の自立的発展 / 花卉産業 / オランダ / 愛知 / 沖縄 |
Research Abstract |
本研究は経済の国際化・グローバル化における農業地理学分野からの貢献を念頭に,まずフードシステムにおける農業生産部門に焦点を当て,その国際的なネットワークの形成がいかになされ,どのような構造を有するのかという点を花卉産業を事例に究明しようとするものである.本年度は2か年計画の1年目にあたり,まず農業の国際化に関わる「食の国際化」の推移とその農業生産部門・産地への影響を考察を行い(愛知教育大学研究報告第50輯),次に研究対象地域を選定して当該地域で資料の収集を行った。 研究対象地域の選定では愛知県・沖縄県を既存の統計資料と新規購入資料のデータをパソコンに入力した花卉産業のデータベースと既存の新聞ファイル等から選定した。それは両県が他の諸県がK社等が海外で育成した種苗を利用しているのに対し(例えば鹿児島県),生産者(愛知県),あるいは農協(沖縄県・愛知県)といった地域の主体が種苗を通じて国際的なネットワークを築いて地域の自立的発展に努めていたためである。 愛知県では渥美半島の農家群が種苗をオランダのC社に委託してそのブラジル農場から輸入していた。それは生産コスト削減を目的とし,さらにより効率的な生産を行うためにオランダから花卉栽培施設・技術を導入していた。これに対して,沖縄県では花卉専門農協がインドネシアに地元出資者との合弁事業で種苗生産のための企業を設立し,その種苗を組合員に販売していた。この事例は組合が沖縄の地域特性である自然条件,とくに台風被害を最小限に食い止め,夏季の暑さで県内での育苗が難しいことからインドネシアに進出したものであった。 次に,このような国際的なネットワークの提携先としてのオランダとインドネシアを海外での研究対象地域として選定した。しかしながら,インドネシアではワヒド大統領下での政情不安から主要調査先の前述の合弁企業の農場での調査が難しく,オランダでの調査を行った。オランダでは日本の花卉生産者の国際的ネットワークの形成の特色を知るため,ネットワーク提携先のC社のあるオランダの花卉生産地域を対象に土地利用調査や資料等の収集を行った。その結果,花卉生産を含めた日本の特色とともに,技術導入の経営的・技術的理由を確認できた。 以上から,次年度,まず国内ではネットワーク形成に介在したM社・S社等の商社やJICA・JETROといった機関での聞き取り,さらに地域での国際的ネットワーク形成の要因を生産者等の経営状況とその経過等からより明確に解明する。海外ではインドネシアの状況によるが,オランダの調査を先行させ,ネットワーク提携先の経営戦略と日本,オランダと日本の花卉生産地域の比較考察をテーマにした調査を深化させて,日本でみられる国際的アグロネットワークの構造を考察していきたい。
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