2000 Fiscal Year Annual Research Report
中・近世移行期における伊勢信仰の地域的展開に関する研究
Project/Area Number |
12780056
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
舩杉 力修 島根大学, 法文学部, 講師 (30314610)
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Keywords | 伊勢信仰 / 御師 / 土産物 / 神明社 / 伊勢領 / 石祠 |
Research Abstract |
第一に、近世における伊勢信仰の実態について明らかにするために、伊勢神宮外宮御師の来田新左衛門家所蔵、延宝5年の江戸及び関東地方の御祓配帳を活字化した。その結果、(1)来田家が有する江戸・関東地方の檀那は、近世初期に大坂・京都といった畿内からの移住者であった。伊勢講は出生地をもとに組織されていた。(3)畿内からの移住者は、江戸や関東地方の都市形成や商業の発展に大きく貢献していた。(4)土産物のなかでも、扇は神宮の祭祀をモチーフとしたもので、御師により病気や害虫を払うものとして宣伝された。(5)土産物の茶は、戦国期の伊勢では、御師により茶園が開発されるなど、伊勢神宮の門前町の経済を発展させた。茶は経済的に発展途上にあった関東地方では、檀那から特に喜ばれたことなどを明らかにした。第二に、近世における伊勢信仰の浸透過程を検討するため、神明社が卓越して存在する新潟県上越地方を事例に検討した。その結果、(1)上越地方で特有の神社景観は石祠であるが、これは石を信仰の対象とする諏訪信仰の影響である。(2)神明社は諏訪社とともに、近世に新田開発の進んだ平野部に分布している。(3)諏訪社は、移住者が出身地信濃国の一宮、諏訪社を勧請したものである。それに対し神明社は、新田地帯で多発する洪水に対する「水除け」として堤防上に勧請された。(4)さらに村では御師に対して「伊勢領」を寄進し、毎年初穂を納めていたことが分かった。以上のように、伊勢信仰の浸透は、近世初期における平野部での新田開発、そして地域の生業と密接に結びついた御師の布教活動によるところが大きいと考えられる。第三に、他の信仰と比較検討するため、広島県尾道市の住吉神社の玉垣の寄進者名を翻刻し、住吉・金比羅といった港町の神社が地域外の人々によって支えられていたことを予察した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 舩杉力修: "伊勢神宮御師来田新左衛門家文書(二) -延宝五年江戸・関東御祓配帳(二)-"島根大学法文学部紀要 社会システム論集. 第5号. 1-31 (2000)
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[Publications] 舩杉力修: "石祠にみる上越市域の神社"上越市史別編 寺社資料編一. (印刷中). (2001)
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[Publications] 舩杉力修: "広島県尾道市住吉神社石造物調査報告"島根地理学会誌. (印刷中)第35号. 1-13 (2001)