2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12780066
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
遠藤 元 大東文化大学, 国際関係学部, 専任講師 (30307144)
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Keywords | タイ / 流通 / 経済危機 |
Research Abstract |
1997年の通貨・金融危機(経済危機)以降、タイの流通業界がどのように変化したかについて、業界レベルおよび個別企業・企業グループレベルでの実態調査を行なった。そのうち、後者のレベルについては、タイの3大小売企業グループである「CPグループ」、「CRCグループ」、「ザ・モールグループ」に注目した。 調査の結果、次の2点が明らかになった。 第1に、1990年代前半の経済ブーム期にタイ系小売企業グループは小売業の多業態化を急速に進めたものの、経済危機発生以後、グループの事業再構築を断行し、各グループはそれぞれ従来からの基幹事業に重点を戻している。なぜなら、各グループは90年代前半の急速な事業拡大のために積極的に外貨借入を行なったが、危機後の通貨価値の下落と消費市場の冷え込みに伴って巨額の為替差損と負債を抱え込むことになり、その返済のために傘下企業の売却と不採算事業の整理とを余儀なくされたからである。 第2に、ただし、小売業全体が等しく大幅な売上減少に喘いでいるわけではなく、一部には経済危機の影響をほとんど受けずに好調を維持している企業・業態もある。その代表は、CPグループ傘下の会員制ホールセールクラブ「サイアム・マクロ社」である。同社は、徹底した低コスト・オペレーションによる低価格販売を実現しているが、この経営方針が経済危機下のタイの消費者に支持されていると考えられる。 以上2点より、タイの小売業界は、経済ブーム期の「グループ間(多業態化)競争」から、経済危機以降の「業態間競争」へと大きく変化したと考えられる。小売業態のうち、特に、従来の主要近代小売業である百貨店業態と近年台頭しているディスカウント業態とが注目されるが、その詳細な比較検討は平成13年度の研究課題としたい。
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