2000 Fiscal Year Annual Research Report
不確実性の下での排出権取引制度のワーキング(環境政策における情報の役割の解明)
Project/Area Number |
12780426
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
坂本 陽子 (藤田 陽子) 琉球大学, 法文学部, 講師 (70315456)
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Keywords | 環境政策 / 排出権取引制度 / 不確実性 / 情報 |
Research Abstract |
本研究では,環境政策,とりわけ排出権取引制度に焦点を当てて,実効性のある施策のための情報運営に関して考察を行っている. まず,米国における二酸化硫黄排出許可証の取引システムについて,その情報管理の方法と政策的効果について分析した.理論上,排出権取引制度は環境政策当局が必要とする情報量の少なさが政策手法としてのメリットとして挙げられる.しかし米国の例を検証すると,連邦環境保護局による取引実績の追跡調査や各排出源からの排出量モニタリングシステムが徹底されており,このことが環境政策としての効果を保証している反面,排出権取引制度のメリットとされていた社会的総費用最小化という目的は必ずしも果たされていないことが明らかとなった.ただし,目標排出量達成のための総費用低減に向けた様々な努力はなされており,とりわけ特徴的なのは,(1)仲介業者参入による取引費用の低減,(2)バンキングや内部取引の許可によるサーチ・コストの低減,(3)段階的規制目標値の早期公開による将来の不確実性の除去,等の工夫である. 次に,上記の検証をもとに,国際的排出権取引制度における情報管理の側面について政策的課題の抽出を行った.その結果,今後次の3点についての検討が求められることが明らかとなった.第1に,各国における排出量に関する情報の非対称性,第2に排出権移転に関する情報管理,第3に排出規制遵守の責任の明確化である.これらについては,取引の方法,各国内における余剰排出権創出のための政策手段,各国の排出量モニタリング制度,売り手責任と買い手責任の問題,等に関する国際的合意が必要不可欠であり,関連するルールを管理するための国際的組織の創設が求められる. 次年度については以上の結果を踏まえ,本研究の目的である経済理論モデルの構築を行う.その際,排出権取引制度を単独の政策手段として扱うのみならず,課税制度等との組み合わせで採用した場合の影響や効果についても考察する予定である.
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