2000 Fiscal Year Annual Research Report
大腸菌ATP合成酵素:変異γサブユニットの回転によるエネルギー共役機構の解明
Project/Area Number |
12780468
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木原 昌子 (岩本 昌子) 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (70252715)
|
Keywords | ATP合成酵素 / FoF1 |
Research Abstract |
本研究では,ATP合成酵素(FoF_1-ATPase)におけるH^+輸送とATP合成(分解)の間のエネルギー共役機構の解明を目的として,FoF_1複合体におけるcサブユニットオリゴマーおよびα_3β_3複合体の回転を,それぞれのサブユニットに結合したアクチンフィラメントの回転によって観察した. まず,機能的なcサブユニットを含む酵素複合体の回転を調べるために,cサブユニットのIle-28をThr残基に置換した.cThr-28(変異型)のcサブユニットに結合したアクチンフィラメントは,α_3β_3複合体をαサブユニットに導入したヒスチジン・タグを介してガラス板に固定すると,ATPの加水分解によって時計回りに回転してcIle-28(野生型)と同様の回転トルクを発生した.野生型のγεc複合体の回転は抗生物質であるベンチュリシジン添加によって頻繁に中断を繰り返すようになったが,変異型の場合には回転の中断頻度は野生型のほぼ半分であり(ベンチュリシジン70μMの場合),ATPase活性の結果に対応していた.次に,本酵素の回転子と固定子が実験的に交換可能であることを示した.遺伝子操作によってF_1部分のαまたはβサブユニットのアミノ末端にビオチン・タグを導入し,蛍光ラベルしたアクチンフィラメントを結合した.Fo部分のcサブユニットのアミノ末端にヒスチジン・タグを導入しガラス表面に固定した.ATPを添加するとアクチンフィラメントの反時計回りの回転が蛍光顕微鏡で観察され,回転トルクはcサブユニットの回転の場合とほぼ同様であった.以上によってα_3β_3を含む複合体とγεc_<10-14>を含む複合体とは,実験的には片方を固定すればもう片方が回転する関係にあり,酵素の触媒作用とH^+輸送作用のエネルギー共役機構に,回転が基本的に関わっていることが示唆された.以上の成果はJ.Biol.Chem.に報告した.
|
Research Products
(1 results)