2001 Fiscal Year Annual Research Report
酵母のイノシトールリン脂質の低温耐性および細胞内膜小胞輸送における役割の解明
Project/Area Number |
12780474
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
鍵和田 聡 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (40281662)
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Keywords | 酵母 / イノシトール / ホスファチジルコリン / リン脂質 / 膜タンパク質 / 小胞体 |
Research Abstract |
酵母(Saccharomyces cerevisiae)のSCS2遺伝子産物は、細胞内膜小胞輸送に関与する膜蛋白質であるシナプトブレビンに結合する蛋白質としてラットやマウスなどで発見されたVAP-33と相同性がある。一方、この遺伝子を破壊した酵母はイノシトール要求性や低温耐性を示す。これらの表現型と他の遺伝子との遺伝学的相互作用の結果から、SCS2遺伝子破壊株ではイノシトールリン脂質の代謝に異常があり、それが結果として低温耐性を引き起こすと考え、この関係の分子的要因を明らかにするためにSCS2遺伝子産物の機能解明を試みた。 本研究ではまずSCS2破壊株のイノシトール要求性を与える要因を明らかにしようとし、SCS2破壊株では酵母のイノシトール生合成に必須の遺伝子であるINO1遺伝子の発現量が野性株に比べて明らかに低下していたこと、しかし、外来プラスミドに挿入したINO1プロモーターからの遺伝子発現はほぼ正常であったことを明らかにした。このことから、SCS2遺伝子産物は染色体に働きかけてINO1プロモーターからの遺伝子発現を正に調節するタンパク質であることが示唆された。一方、SCS2遺伝子破壊株のイノシトール要求性は、ホスファチジルコリン生合成のためのCDPコリン経路に位置する遺伝子を破壊すると回復するが、もうひとつのPC生合成経路であるPEメチル化経路を破壊しても回復しないことを明らかにした。 また、SCS2破壊株のリン脂質と中性脂質組成を調べたところ、この破壊株には他のリン脂質代謝変異株に見られたような野性株との大きな相違は観察されなかった。ただし、34℃で生育させたときにイノシトールの代謝が盛んになることを明らかにしたことから、SCS2岐壊株でみられた高温感受性のイノシトール要求性は高温でのイノシトール代謝昂進にイノシトール生合成が追いつかなくなったためと推測された。
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