2000 Fiscal Year Annual Research Report
D-アスパラギン酸含有蛋白貭に特異的な新規分解酵素の同定
Project/Area Number |
12780480
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
木野内 忠稔 自治医科大学, 医学部, 助手 (90301457)
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Keywords | D-アミノ酸含有蛋白質 / D-アミノ酸 / D-アスパラギン酸 / ミトコンドリア / アポトーシス / アルツハイマー病 / プロテアーゼ / 老化 |
Research Abstract |
従来、哺乳類の構成アミノ酸は、すべてL型だけであると考えられていたが、加齢と共に遊離のD型アスパラギン酸(D-Asp)やD-Asp含有蛋白質が、体内で生じることが明らかになり、D-Asp含有蛋白質は、白内障や動脈硬化、プリオン病などの疾病との関連が指摘されている。特にアルツハイマー病では、D-Asp残基を含むβアミロイド蛋白質が、実際の患者脳で発見され、その因果関係が注目されている。私は、こうした有害なD-Asp含有蛋白質に対する排除機構として、D-Asp含有蛋白質に特異的な分解酵素があるのではないか、との仮説をたて、D-Asp含有蛋白質に特異的な分解酵素の探索を行った。その結果、特異的なエンド型分解酵素の精製に成功した。従って、この酵素をD-aspartylendopeptidase(DAEP)と名付け、今年度においてはDAEPの性質についての研究を重点的に行った。その結果、各臓器においてDAEPは、肝臓、腎臓、脾臓、卵巣/精巣、脳などの順に比活性が高く、細胞内においては、ミトコンドリア内膜に局在する分子量70万の高分子複合体であることが明らかになった。その酵素的性質は、至適温度37℃、至適pH8.5であり、Zn^<2+>を除く2価のカチオンにより、比活性が2倍に上昇することが明らかになった。 さらに、DAEPの性質について理解を深めるために、DAEP活性を抑制する特異的な阻害剤の開発に取り組み、D-Asp誘導体としてその合成に成功した(Bz-Arg-His-D-Asp-CH_2Cl、現在、特許出願準備中)。この阻害剤は、不可逆的にDAEPに結合し、そのIC_<50>は、3μMであり、ミトコンドリアに処理すると、チトクトームcの放出を誘導することが明らかになった。従って、DAEPはアポトーシスの制御にも関与し、DAEPを標的とした抗がん剤として本阻害剤を利用できることが示唆された。さらに、DAEPの活性中心を特異的に標識することを目的としたBiotinyl-Arg-His-D-Asp-CH_2Cl、Biotinyl-Gly-Gly-D-Asp-CH_2Clを合成し、現在、DAEP活性中心の一次構造を解析している。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Hisashi Koike: "Metabolism of amyloid precursor protein in COS cells transfected with a beta-secretase candidate"Cytotechnology. 33. 213-219 (2000)
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[Publications] Yutaka Inoki: "Prcteoliposomes colocalized with endogenous mitochondria in mouse fertilized egg"Biochem. Biophys. Res. Commun.. 278. 183-191 (2000)
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[Publications] Yutaka Inoki: "Ganglioside GD3 and its mimetics induce cytochrome crelease from mitochondria"Biochem. Blophys. Res. Commun.. 276. 1210-1216 (2000)
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[Publications] Tadatoshi Kinouchi: "Analysis of metabolic pathways of Alzhelmer's disease amyloid precursor protein"Jichi Medical School Journal. 23. 47-54 (2000)
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[Publications] 木野内 忠稔: "哺乳類におけるD-アスパラギン酸含有蛋白質に特異的な分解酵素について"生化学. 72・8. 696 (2000)
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[Publications] 木野内 忠稔: "D-アスパラギン酸含有蛋白質に特異的な分解酵素の探索とその性質について"23回日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集. 664 (2000)