2000 Fiscal Year Annual Research Report
新規構造を持つ担子菌由来亜鉛プロテアーゼの結晶構造解析
Project/Area Number |
12780504
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
熊坂 崇 理化学研究所, 構造生物物理研究室, 研究員 (30291066)
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Keywords | 結晶構造 / プロテアーゼ / 亜鉛 / 担子菌 / アスプジンシン / 多波長異常分散法 / リジン特異性 |
Research Abstract |
担子菌マイタケを破砕しカラムクロマトグラフィーにより抽出した亜鉛プロテアーゼ(以下、GFMEP)の結晶化を行い、ほぼ同じ結晶化条件から4種の異なる結晶系の単結晶を得ることに成功した。これらのうち、六方晶系に属する結晶を用いて、本タンパク質中に含まれる亜鉛原子に対する多波長異常分散実験を、放射光実験施設において行い、良好な電子密度図を得ることができた。引き続き、分子モデルを作成し、2.5オングストローム分解能で精密化することに成功した。 得られた分子モデルは、これまで得られている多くの亜鉛プロテアーゼの構造とは多くの点で異なっていた。特に、活性中心を形成している亜鉛原子周辺の構造は、これまでにないグルタミン酸側鎖の二葉(biloave)配位となっていて、アスパラギン酸側鎖が配位するサーモリシンの一葉配位とは異なる。このグルタミン酸側鎖は、これまで10残基程下流にあるグルタミン酸であると考えられていたが、今回の解析によって正しい配位子を決定できたことも収穫の一つである。 また、リジン残基に対する特異性は、酸性アミノ酸残基が密集するS1'ポケット部によって提示されている。これは、活性中心のすぐ傍らにあって、リジン残基のアミノ末端側を切断するのに好都合である。このポケットは同じアルカリ性側鎖を持つアルギニン残基に対する親和性をも持ちうるが、その側鎖の長さの違いのため、切断されるカルボキシル基を活性中心に正しく配位させられないような構造をとって、二つのアルカリ性側鎖を弁別していることも明らかになった。 一方、多くの類似点も見られた。全体構造はアミノ末端側の残基からなるドメインとカルボキシ末端からなるドメインの2つの領域から形成されており、その間に基質結合領域がある。各ドメインは他のプロテアーゼに見られるように、それぞれβリッチな構造、ループやヘリックスに富んだ構造を持っている。 次年度は、これらの解析の結果を受けて、残り3種の結晶系の構造についても詳細に検討するとともに、基質複合体や亜鉛原子の置換などを含めた解析を継続していく計画である。
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