2000 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳動物における相同組換え遺伝子と細胞周期チェックポイントに関する研究
Project/Area Number |
12780515
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
吉田 佳世 大阪市立大学, 医学部, 助手 (30311921)
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Keywords | Dmc1遺伝子 / p53遺伝子 / ダブルノックアウトマウス / アポトーシス |
Research Abstract |
生物を取り巻く環境中には、電離放射線のような遺伝子に損傷を及ぼす変異原物質が存在するが、生物には、それらの損傷を組換えにより修復する機構がある。我々は、減数分裂特異的相同組換え遺伝子であるDmc1遺伝子のノックアウトマウスを作製した結果、相同染色体の対合不全となり減数分裂が停止し、アポトーシスに至ることを明らかにした。また,DMC1タンパクはp53タンパクと結合していることも明らかにした。我々の目的は、Dmc1遺伝子と細胞周期チェックポイント遺伝子であるp53との関連を明らかにすることである。 我々は、相同組換え遺伝子と細胞周期チェックポイント遺伝子の関係を調べるために、Dmc1遺伝子とp53遺伝子とのダブルノックアウトマウスを作製した。その結果、(1)Dmc1欠損マウス(Dmc1-/-,p53+/+)とp53とのダブル欠損マウス(Dmc1-/-,p53-/-)に20-30Gyの放射線を照射したところ、脾臓の細胞では、p53+/+のマウスでは、アポトーシスを起こしているのに対して、p53-/-のマウスでは、アポトーシスを起こしていないことがわかった。また、(2)Dmc1欠損マウス(Dmc1-/-,p53+/+)およびダブルノックアウトマウス(Dmc1-/-,p53-/-)ともに、Dmc1遺伝子欠損により、精細管において減数分裂の停止とアポトーシスを起こしており、p53遺伝子の欠損によって、アポトーシスが回避されることはなかった。このことは、放射線などによる牌臓細胞のアポトーシスには、p53遺伝子が必要であるが、Dmc1遺伝子欠損により起こる対合不全に伴う精母細胞のアポトーシスの過程には、p53遺伝子が関与していないことが示唆された。減数分裂前期には、対合などの染色体の結合や分離が正常に働かないとp53非依存的な機構が存在し、生殖細胞をアポトーシスにより排除すると考えられる。
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