2001 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄交叉性ニューロンの運動神経回路網における機能的役割の解明
Project/Area Number |
12780617
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
西丸 広史 筑波大学, 基礎医学系, 助手 (20302408)
|
Keywords | 脊髄 / 歩行運動 / ラット / 交叉性ニューロン / GABA |
Research Abstract |
哺乳動物における歩行運動、特に左右の交代性のリズム活動のパターンの形成には左右の交叉性の脊髄介在ニューロンが深く関与していると考えられるが、その機能発達に関してはこれまでほとんど調べられていない。本研究ではこうした交叉性脊髄介在ニューロンの電気生理学的性質とその機能分化を調べることを目的とした。新生児ラット脊髄摘出標本においてセロトニン(5-HT)の灌流投与により左右の腰髄前根に交代性の歩行運動様のリズム活動が誘発される。このリズム活動を引き起こす神経回路は胎生期に機能分化するが、左右の前根でみられるリズムのパターンは、その発現初期(胎生14-15日)においては同期したリズムが見られ、生まれる直前(胎生18-20日)に交代性のパターンへと変化する。この二つの異なるパターンを示す時期のラット胎児から得た脊髄摘出標本を用いて正中部で灌流槽を二分し、片側のリズム形成回路網から対側運動ニューロン群への入力について調べた。同期したリズムが見られる胎生15.5日の標本において片側脊髄に5-HTを灌流投与したところ、投与側と同期したリズムが対側前根にも誘発された。さらに片側灌流槽へのカルシウムイオンを除去した状態での薬物投与により、個々の交叉性ニューロンを直接興奮させたところ、対側前根に5-HT投与時と同様のリズム活動が誘発された。これらの結果から、片側脊髄のリズム形成回路網は交叉性ニューロンを介して対側の連動ニューロンに興奮性に結合していることが示唆された。この対側のリズムは対側脊髄へのビククリン投与によって抑制されたことから、交叉性の興奮性シナプス入力は主にGABA_A受容体を介していることが示唆された。一方、左右交代性のパターンが見られる胎生20.5日の脊髄摘出標本においては、片側脊髄に5-HTを灌流投与してもその対側前根にはリズムが誘発されず、この時期、リズム形成回路網の交叉性入力の性質が抑制性へと変化したことが示唆された。
|
Research Products
(1 results)