2000 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトフローラマウスを用いた発癌における食餌成分の発癌抑制効果の研究
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12780624
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平山 和宏 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (60208858)
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Keywords | 腸内菌叢 / DNAアダクト / 変異原物質 / ヒトフローラマウス / 無菌動物 / ヘテロサイクリックアミン |
Research Abstract |
複数の健康成人から採取した糞便の懸濁液に変異原物質である2-amino-3-methyl-3H-imidazo[4,5-f]quinoline(IQ)または2-nitrofluorene(NF)を加え、嫌気的に37℃、18時間反応させた後、エームス試験によって各試料の変異原性の変化を測定した。IQは肝S9分画の活性化なしでは弱い変異原性しか示さないが、ほとんどの糞便懸濁液はその直接変異原性を増強した。逆にS9分画依存変異原性は糞便との反応により減弱した。一方NFはS9分画の有無に係わらず変異原性を有するが、ヒト糞便懸濁液はその直接変異原性をほとんど完全に失わせ、S9分画依存変異原性については増強から減弱まで様々であった。これらの変異原物質の代謝は同一個体における日間変動が大きかったものの、個体によってその能力が異なっていた。 この結果をもとに、変異原物質代謝能が高い個体を選択し、その糞便を無菌マウスに経口投与してヒトフローラ保持(HFA)マウスを作製したところ、ヒト糞便の持つ変異原代謝能は概ねマウス腸内に移植することできた。このHFAマウスと無菌マウス、マウス腸内菌叢を持つマウスを比較したところ、変異原物質の代謝には腸内菌叢の存在が必須であり、ヒトとマウスの腸内菌叢ではその活性が異なることが示された。 さらにこれらのマウスに変異原物質を経口投与し、各臓器におけるDNAアダクトの生成を解析したところ、腸内菌叢の存在はDNAアダクトの生成に重要な役割を果たしており、その影響は臓器や投与された物質によって異なることが明らかとなった。また、ヒトの腸内菌叢はDNAアダクト生成においても実験動物の腸内菌叢とは異なる効果を持つことも示された。 本研究はヒト腸内菌叢の発癌のプロセスにおける重要性を示唆し、HFAマウスがその役割の研究に有用なモデル動物となりうることを明らかにした。
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