2002 Fiscal Year Annual Research Report
転倒予防のための工学的解析に基づいた運動療法の開発
Project/Area Number |
12832053
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Research Institution | KITASATO UNIVRTSITY |
Principal Investigator |
大渕 修一 北里大学, 医療衛生学部, 助教授 (50265740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷 和徳 産業技術総合研究所, 人間環境システム部, 主任研究官
池田 憲昭 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (30050660)
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Keywords | 転倒 / 転倒回避反応 / 工学的解析 / 転倒予防 / 運動療法 / 介護予防 / 無作為化比較対照試験 / 高齢者 |
Research Abstract |
研究期間の最終年に当たる本年度は、これまで工学的な解析により推定された転倒のメカニズムに基づく、運動療法のバランス機能に対する改善効果を地域在住高齢者を対象に無作為化比較対照試験により明らかにした。 対象は、重篤な整形外科疾患の持たない65歳以上の高齢者31名を地域から募集した。研究への同意を書面で得たのに、問診、バランス機能検査、歩行能力検査を行った。そのうち2名が除外基準に合致したため対象からのぞかれた。29名を無作為に新しく開発された運動療法群(転倒刺激群)とコントロール群の2群に分けた。いずれの群も週2回、1ヶ月間、15分間、時速2kmのトレッドミル上での歩行練習を行った。転倒予防群には歩行練習中に132回の転倒誘発刺激を加えたがコントロール群には転倒誘発刺激を加えなかった。転倒誘発刺激は、両側分離型のトレッドミルのいずれか片側の歩行ベルトを500msの間、急速に減速することにより発生させた。刺激の量は原則量により変化させることができ、1週間ごとに20%、40%、60%と刺激の量を漸増させた。 その結果、転倒刺激群ではファンクショナルリーチ、タイムドアップアンドゴー、転倒刺激に対する反応時間、骨盤部の加速度に有意な改善効果がみられるのに対し(p<.05)、コントロール群ではタイムドアップアンドゴーにのみ改善効果を認めた(p<.05)。また、運動の種類と改善効果の間には統計学的な交互作用を認め、転倒刺激群が特異的にバランス機能を改善することがわかった(p<.05)。 従って、本研究により新しく開発された工学的な解析に基づく転倒予防のための運動療法は、地域在住高齢者のバランス機能を効果的に改善し、転倒を予防する可能性があるといえる。今後、大規模無作為化比較対照試験により転倒発生率がどの程度低下するのか検討する必要がある。
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