Research Abstract |
半側空間無視(以下,無視)は右半球損傷後に高頻度にみられる高次脳機能障害であり,左側の刺激に対して,発見して報告したり,反応したり,その方向を向いたりすることが障害される病態である.本症状の存在は,リハビリテーションの進行や日常生活の自立を阻害する.また,無視は軽度であっても,行動範囲の拡大に伴いさまざまな問題や危険を生じ,正しい評価が欠かせない.本年度は,タッチパネルとタブレットを利用したパソコンによる検査法の開発に重点を置いた.タッチパネルを用いた線分二等分試験は,10,15,20cmの線分を各10本,無作為順に二等分する方法で実施した.真の中点から右方への平均偏位量は,BIT行動性無視検査成績と平行した.また,二等分成績のばらつき(標準偏差)にも注目すると軽微な無視の検出も可能であった.本方法は,課題の遂行時間が約3分と短く,データ分析も容易であり,患者,検査者双方の負担軽減の観点からも臨床的有用性が確認された。BIT行動性無視検査については,通常検査部分を液晶タブレット上で実施するシステムを開発し,臨床応用に入った。タブレットは,反応に専用ペンを用いるが,紙と鉛筆で実施するのと同様に,画面上に手を置くことができる.そのため,脳血管障害患者でも,パソコンを使っているという違和感なく自然な検査が可能となった,採点の観点では,抹消試験の採点ミスが回避できるようになった.また,最終結果に加えて,課題の遂行過程として反応の順序と時間を記録でき,無視による問題点をより明確にできるようになった,例えば,抹消試験は,リハビリテーションによって最終的には標的をほとんど見つけられるようになることがあるが,所要時間が長くかかり日常生活での問題が示唆された.今後,反応過程の分析を進め,無視の検出精度を高めると同時に,問題点のフィードバックによって無視を改善させる方向に結び付けたい.
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