2002 Fiscal Year Annual Research Report
半側空間無視の機序とリハビリテーションに関する研究-注意と運動の連関から-
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12832071
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
石合 純夫 財団法人東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所, 副参事研究員 (80193241)
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Keywords | 半側空間無視 / 機序 / リハビリテーション / 注意 / 運動 / 液晶ディスプレイ / タブレット / パーソナルコンピュータ |
Research Abstract |
半側空間無視(以下,無視)は,右半球損傷後に起こる代表的な高次脳機能障害である.無視患者は,左側への不注意のため移乗,移動,歩行ならびに日常生活の様々な場面で問題・危険を示す.無視の適切な評価は,リハビリテーションを有効かつ安全に進める上できわめて重要である.本年度は,半側空間無視の国際的検査法であるBIT行動性無視検査のうち,通常検査のパソコン-液晶タブレット版の臨床応用を進め,その妥当性を検討した.対象は,様々な重症度の左無視を呈した右利き右半球脳血管障害患者26例.対象患者全例に,パソコン版と従来の方法(紙と鉛筆)の両者を実施した.通常検査合計得点(最高146点)は,従来の方法で47-134点(平均104.2,SD26.1),パソコン版で30-138点(平均105.6,SD30.4)であった.2つの方法における合計得点間のSpearmanの順位相関ρ値は0.760,p<0.0001であり,ほぼ同等の結果が得られた.液晶ペンタブレットは,紙と鉛筆の場合と同様に画面上に手を載せてペンで反応できるため,脳血管障害患者でもパソコンに向かうという違和感はなかった.パソコン-液晶タブレット版BITは従来の方法と置き換えて妥当に使用可能であり,患者の負担増加もない.採点は,一部の自動化により省力化と採点ミスの軽減が達成された.また,結果の記録と再生ならびに印刷も容易にできる.検査遂行課程と所要時間の分析は,軽度または改善期の半側空間無視の問題点を明らかにする上で有用であると考えられた.現在,脳血管障害好発年齢の健常人を対象に,BITパソコン-液晶タブレット版の正常値を集積・分析中である.次年度は,検査所要時間に関するカットオフの設定や,遂行手順の問題点を明らかにする基準の作成を行う予定である.さらに,遂行結果を明確に再現してフィードバックし,無視改善に結び付ける.
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Ishiai S, Koyama Y, Nakano N, Seki K, Nishida Y, Hayashi K: "Image of a line is not shrunk but neglected. Absence of crossover in unilateral spatial neglect"Neuropsychologia. (印刷中).
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[Publications] 中野直美, 石合純夫, 小山康正, 関 啓子, 平林 一, 稲木康一郎: "左半側空間無視患者の線分二等分試験結果に与えるフレームと線分配置の影響"神経心理学. 18巻3号. 200-207 (2002)
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[Publications] 石合純夫: "半側空間無視-新たなメカニズム論と無視改善への手がかり-"神経心理学. 18巻3号. 182-187 (2002)
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[Publications] 石合純夫: "方向性注意障害のメカニズムとリハビリテーション"脳の科学. 24巻6号. 531-539 (2002)
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[Publications] 石合純夫: "脳障害(認知機能障害)の特殊性からみたリハビリテーションアプローチ"総合臨床. 51巻12号. 3169-3176 (2002)
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[Publications] 石合純夫: "半側空間無視研究の動向と将来への展望"Monthly Book Medical Rehabilitation. 20巻. 66-73 (2002)
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[Publications] Ishiai S(分担執筆): "Perceptual and motor interaction in unilateral spatial neglect. In : Karnath H-O, Milner AD, Vallar G, editors. The cognitive and neural bases of spatial neglect"Oxford University Press. 153-166 (2002)