2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12837005
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
安香 宏 昭和女子大学, 教授 (70125897)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 宗和 お茶の水女子大学, 生活科学部, 助教授 (20245898)
清水 裕 昭和女子大学, 文学部, 助教授 (70246007)
田中 奈緒子 昭和女子大学, 文学部, 助教授 (50277935)
門本 泉 東京少年鑑別所, 心理技官(研究職)
鈴木 護 科学警察研究所, 防犯少年部, 研究官
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Keywords | 非行少年 / 自我構造 / 自我機能 / 表情認知 / 攻撃性 / 共感性 / 他者意識 / 逸脱経験 |
Research Abstract |
1.表情認知の研究 対人認知側面から自我構造を捉えることに着目し、非行少年と一般少年の間での各種表情認知の差を実験的に検討した。性差が存在し、特に一般群男子において認知が不正確な傾向が明らかになった。また、非行少年のうち、特に表情認知が不正確な者の非行の様態・深度は様々であったが、非行の背景にある心理・社会的問題は深刻であり、家庭内での情緒的交流や安定感の希薄さ、学校におけるいじめ被害や孤立の体験があり、これらと表情認知の「ずれ」との関連性が示唆された。 2.自我機能の社会的側面の研究 行動特性として、「社会規範逸脱行動経験」、「迷惑行動経験」、「向社会的行動経験」、意識特性として、「認知的共感性」、「情動的共感性」、「暴力肯定観」、「対人関係の顧慮度」、に関する質問紙調査の結果を分析した。逸脱経験に関しては、現状へのあきらめから暴力を肯定する傾向が非行少年の非行を促進させる効果がある事実と、「認知的共感性」に一般少年の非行定着を抑止する効果がある事実が示された。また、周りを気にせず迷惑行動をしている者は、非行・一般少年ともに、暴力を正当化したり、大人不信や現状へのあきらめから暴力を肯定する傾向が強い事実とともに、非行少年では親密な人への共感性や思いやりが、より広い他者には繋がりにくい事実が示唆された。さらに、非行少年の場合、一般少年と異なり、「認知的共感性」が向社会的行動を媒介していない可能性とともに、現状へのあきらめにより暴力を肯定することが向社会的行動を抑制させている事実が示された。 3.表情認知と自我機能の社会的側面に関する統合的研究 女子非行少年に関しては、大人不信や現状へのあきらめから暴力を肯定する傾向が高いと、表情認知に「ずれ」が生じやすいことが明らかになったほか、人格特性の「偏向」・「偏狭」との相関から、物事の捉え方そのものの偏りが指摘された。他方、男子非行少年に関しては、現状へのあきらめから暴力を肯定する傾向が高いと表情認知の「ずれ」が大きい事実が明らかにされた。また、表情認知の仕方と共感性との関連性は認められなかったが、女子非行少年に関して、情動的共感性が極端に高いと表情認知の「ずれ」が大きい事実が明らかにされた。 いずれの研究成果も、平成14年度日本犯罪心理学会大会において発表した。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 田中純夫, 田中奈緒子, 清水裕, 田中かおり, 大川力: "非行少年の自我構造に関する研究III-逸脱行動の構造とその関連要因-"犯罪心理学研究. 40巻. 42-43 (2002)
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[Publications] 田中奈緒子, 清水裕, 田中純夫, 宮崎悠華, 大川力: "非行少年の自我構造に関する研究IV-迷惑行動の構造と関連要因-"犯罪心理学研究. 40巻. 44-45 (2002)
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[Publications] 清水裕, 田中純夫, 田中奈緒子, 馬場誉史亞, 大川力: "非行少年の自我構造に関する研究V-向社会的行動の構造と関連要因-"犯罪心理学研究. 40巻. 46-47 (2002)
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[Publications] 鈴木護, 田中奈緒子, 田中純夫, 清水裕, 馬場誉史亞, 大川力: "非行少年の自我構造に関する研究VI-行動経験と意識特性との関連-"犯罪心理学研究. 40巻. 48-49 (2002)
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[Publications] 馬場誉史亞, 宮崎悠華, 鈴木護, 大川力: "非行少年の自我構造に関する研究VII-非行の特質との関連から-"犯罪心理学研究. 40巻. 50-51 (2002)
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[Publications] 藤田宗和, 門本泉, 安香宏: "非行少年の自我構造に関する研究VIII-各種属性による表情認知の特徴について-"犯罪心理学研究. 40巻. 52-53 (2002)
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[Publications] 門本泉, 藤田宗和, 安香宏: "非行少年の自我構造に関する研究IX-非行少年の表情認知の事例研究的アプローチ-"犯罪心理学研究. 40巻. 54-55 (2002)
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[Publications] 田中かおり, 宮崎悠華, 門本泉, 藤田宗和, 安香宏: "非行少年の自我構造に関する研究X-実験データと調査データとの関連を探って-"犯罪心理学研究. 40巻. 56-57 (2002)